大腿骨頭壊死となれば、大腿骨頭部を切断しそこに人工骨頭を埋め込むことになります。
これを大腿骨頭置換術と呼びます。
寛骨臼蓋の損傷の大きいものは、骨頭だけに止まらず、人工関節の埋め込みとなります。
これを防止するには、いかに早く整復固定をするかにかかっているのです。
骨折を伴わないときは、受傷から12時間以内、
骨折のあるものでも24時間以内に整復を実施すれば予後は良好と言われています。
股関節の後方脱臼・骨折は数多く経験していますが、
人工骨頭や人工関節の置換に至ったものは、ごく最近の3例のみで、僅かです。
股関節後方脱臼・骨折における後遺障害のキモ?
1)股関節の機能障害と痛み、下肢の短縮、大腿骨頭壊死に伴う人工関節置換が後遺障害の対象となります。
2)経験則では、受傷後6カ月で症状固定とし、股関節の機能障害で12級7号が認められています。
12級7号以上のポイントは、寛骨臼蓋の骨折です。
骨折しているときは、そのレベルと、術式、その後の骨癒合がどうなっているかを、
3DCTやMRIで丁寧に立証しなければなりません。
症状固定を遅らせると、後遺障害が認定される可能性は薄くなりますので、この点も要注意です。
3)術後、主治医の説明する、大腿骨頭壊死の可能性は、あまり過剰に気にすることはありません。
なぜなら、ほとんど起こらないからです。
4)人工骨頭に置換された場合、この骨頭の耐久性が10年と説明されることがありますが、これも気にすることはありません。
事故後の極端な肥満が克服できないで、再置換術になったケースを1例だけ経験していますが、
これは、被害者側に問題があって、再置換術となった極端な例です。
人工関節の材質は、ポリエチレンから超高分子量ポリエチレン、骨頭については、セラミックが普及し、
通常の生活であれば、耐久性も20年以上とされています。
認定基準は改訂され、人工骨頭、人工関節を挿入置換しても、大多数は10級10号となります。
5)骨盤骨の変形に伴い、下肢の短縮が認められるときは、いずれか上位の等級が認定されます。
本件では、実際に大腿骨や下腿骨が短縮しているのではありません。
骨盤骨の変形により歪みが生じたもので、私は、下肢の短縮で認定されないと理解していました。
しかし、認定基準は、微妙に修正されています。
骨盤骨の変形は、12級5号ですが、歪みによる下肢の短縮が3cm以上であれば10級8号です。
このときは、10級8号の認定となります。
骨盤骨の高度変形により、股関節に運動障害が生じたとき、これらの等級は併合されます。 |