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交通事故外傷と後遺障害


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外傷性横隔膜破裂・ヘルニア

横隔膜は、膜を上下させることにより、胸の気圧を管理しているのですが、
交通事故や高所からの転落などで胸部に強い打撃を受けると、
風船を踏みつけると割れるように、排気が間に合わず、横隔膜そのものが裂けることがあります。

横隔膜が裂けると、今まで横隔膜によって区切られていた臓器=胃、小腸、大腸などが脱出することがあり、
これを外傷性横隔膜ヘルニアと呼んでいます。

外傷性ヘルニアでは、受傷直後に胸骨下部=心窩部の強い痛み、嘔吐、呼吸困難、ショックなどの症状が現れます。
胸部XPで、横隔膜と肺との境界がはっきりせず、胸腔内や縦隔内に腸管のガス像を認めます。
胃などの管腔臓器が脱出すると、肺内に管腔臓器が写し出されます。
消化管バリウム造影検査では、より明瞭に脱出した腸管が描写され、確定診断となります。

外傷性ヘルニアの治療では、緊急的にオペが実施されています。
横隔膜は呼吸に直結している部分であり、脱出した臓器そのものによる症状よりも、
脱出した臓器によって横隔膜の動きが妨げられることが危険なのです。
オペで、横隔膜裂孔が閉鎖されれば、予後は良好で、ほとんどは、後遺障害を残すことなく改善が得られています。

ネット上の論文では、開胸・回復術と腹腔鏡術の2例が紹介されています。

73歳、女性、バイクを運転、右折の際、直進の乗用車と衝突、左半身を強打、7m飛ばされる、
⇒救急車にて当院に搬送⇒XP、CTで、外傷性横隔膜破裂、骨盤骨折、大腿骨々幹部骨折、
多発肋骨々折、肩甲骨々折、腓骨々折、足関節骨折と診断⇒出血性ショックを伴い、
人工呼吸器管理下に迅速輸血を行い、緊急血管造影検査を施行⇒
両側内腸骨動脈の数箇所の側枝や両側の第5腰動脈に造影剤の漏出を認め、
スポンゼル細片を注入し塞栓止血術を施行⇒左外傷性横隔膜破裂に対し全身麻酔下、
開胸・開腹で緊急手術を施行⇒胃底部前壁と大網組織の一部が胸腔内へ脱出し、心膜底部が一部損傷し、
横隔膜の腱中心から食道裂孔に至る約10cmの裂創と無気肺を認める、⇒滑脱臓器を用手的に腹腔内へ戻し、
横隔膜損傷部は縫合閉鎖し、心膜損傷部も縫合閉鎖⇒術後4日で人工呼吸器より離脱、
術後9日目に一般病棟に移る、⇒整形外科で、16日目に左大腿骨々幹部骨折、左足関節、
左鎖骨々折に対し、観血的骨接合術を施行、⇒骨盤骨折、肩甲骨々折に対しては保存療法を行い経過良好、
⇒受傷から72日目に退院となった。

70歳、女性、シートベルト着用下での正面衝突事故、
⇒ドクターヘリで救急搬送、⇒前胸部痛、軽度の呼吸困難を認め、
CTで左外傷性横隔膜破裂と診断し緊急腹腔鏡下手術を施行、⇒腹腔鏡下観察において他臓器損傷はなく、
横隔膜腱性部が横方向に5cm裂け、同部位より胃・大網が左胸腔内に脱出、⇒脱出臓器を腹腔内に還納、
横隔膜破裂部を結節縫合し修復、⇒術後8日目、合併症なく軽快退院する。

私が経験した被害者は、大阪市大正区に居住する53歳、女性で、
軽四輪貨物の助手席に同乗中、助手席側に2トンとラックの側面衝突を受けたもので、
外傷性横隔膜破裂、脾臓破裂、肝出血、左恥骨および坐骨骨折、左大腿骨頚部内側骨折の重傷事案でした。

外傷性横隔膜破裂は、開胸術により縫合閉鎖が、脾臓は摘出、左恥坐骨の骨折は保存的に、
左大腿骨頚部骨折はスクリュー固定が実施されました。
受傷から8カ月目に症状固定、脾臓の亡失で13級11号、左股関節の機能障害で12級7号、
併合11級が認定されましたが、横隔膜破裂は、障害を残すことなく治癒しています。

もう1例の経験は、上位頚髄損傷による横隔神経の切断です。
兵庫県にお住まいの60歳男性ですが、原付を運転、勤務先より自宅に戻る途中、
軽四輪トラックの追突を受けて反対車線に転倒、
おりから反対車線を進行中の2トントラックにもはね飛ばされたのです。
主たる傷病名は上位頚髄C2/3の横断型損傷でした。
脊髄損傷ですから、四肢体幹麻痺であり、手足はピクリとも動きません。
横隔神経を支配しているC3神経が切断されており、横隔膜を動かすことができません。
つまり、自力で肺呼吸ができない、音声でコミュニケーションができない状態となったのです。
その日から、人工呼吸器=レスピレーターに依存する生活となりました。
私が担当した交通事故で、最もお気の毒で、悲惨な被害者でした。
ご本人の強い希望があり、奥様は、受傷から1カ月で退院、自宅における介護を決断されました。

最小限の自宅の改造、
据え置き型レスピレーターの設置、
地元医師会を通じて、往診治療の要請、
全てが未知の領域でしたが、なんとか、態勢を整えました。
ところが、自宅介護から4カ月、循環不全、緑膿菌による肺炎の合併により、逝去されました。

外傷性横隔膜破裂・ヘルニアにおける後遺障害のキモ?

1)外傷性横隔膜破裂・へルニアであっても、発見が早期で、
破裂部が適切に縫合されると、障害を残すことなく改善が得られています。
しかし、外傷性横隔膜破裂のみの単独外傷は考えられません。
多くは、脾臓破裂、肝臓出血、骨盤骨折などを合併しています。
傷病を総合的に捉えて対処し、来たるべき後遺障害の申請に備えなければなりません。

2)上位頚髄損傷と横隔神経の切断では、お気の毒ですが、改善の手立てがありません。
もちろん、後遺障害は別表機1級1号ですが、立証に苦労することもありません。

3)参考までに、頚髄神経の支配領域を簡単に説明しておきます。
C3は、横隔神経を支配、切断では、自発呼吸ができなくなり、人工呼吸器に頼ることになります。
C5は、上腕二頭筋を支配、これが障害されると自力で肘を曲げることができなくなります。
C6は、手関節を背屈させ、
C7は手首を屈曲させ、上腕三頭筋を支配しています。
C8は、指を曲げることに、Th1は指を開いたり閉じたりする運動に関与しています。
それより下位は、運動神経ではなく感覚神経で評価するのですが、Th4は乳首周辺の感覚に、
Th7は剣状突起=みぞおち周辺の感覚に、臍部がTh10であり、鼠径部がTh12に関与しています。

頸髄損傷は、C6あたりで発症することが多く、
C5が麻痺していないため上腕二頭筋は収縮ができるのですが、C7より上位の損傷では、
麻痺しているため上腕三頭筋を収縮することができず、肘を自力で伸ばすことができなくなります。


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