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交通事故外傷と後遺障害


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12.上位頚髄損傷と横隔膜ペーシング

12.上位頚髄損傷と横隔膜ペーシング
 

脊髄損傷の部位

障害の内容

C5より上

呼吸麻痺,しばしば死亡

C4/5、またはC4より上

完全な四肢麻痺

C5/6の間

下肢の麻痺はあるが、上肢の外転、屈曲は可能

C6/7の間

下肢、手首、手の麻痺があるが、肩関節の運動および肘関節の屈曲は通常可能、

Th1より上

横断損傷があれば、縮瞳

Th11/12の間

膝の上下の下肢筋麻痺、

Th12〜L1

膝より下の麻痺、

馬尾

反射低下性または無反射性の不全麻痺が下肢に生じ、通常は神経根の分布域に痛みと触覚過敏が生じる、

S3/4/5

腸および膀胱機能の完全な喪失、

上記は、脊髄の損傷部位と障害の大雑把な分類を示したものです。
脊柱に強い外力が加えられることにより、脊椎を脱臼・骨折し、脊髄損傷を発症しています。
この内、上位頚髄損傷、C1/2/3に限局した横断型頚髄損傷を解説しておきます。

C1/2では、先に環軸椎の脱臼・骨折・亜脱臼を説明していますが、
これにとどまらず、横断型頚髄損傷を来すと、
肋間筋および横隔膜の運動を支配している神経が破断し、自発呼吸ができなくなります。
肋間筋および横隔膜の運動により、肺呼吸が機能しているのです。

この部位に、横断型頚髄損傷を発症すると、四肢体幹麻痺に加え、自発呼吸の麻痺することにより、
人工呼吸器、レスピレーターに頼ることになります。
気管切開により、装着中は声を出すことができず、自力で排痰も不可能、
四肢はピクリとも動かず、排尿・排便のコントロールもできず、垂れ流しとなります。
徐々に循環不全となり、死に至ります。
これまでに、2例を経験していますが、非常にお気の毒で言葉もありません。

横断型脊髄損傷は、MRIで立証することができますが、日常生活の全面で、全介護が必要な状態であり、
後遺障害は別表気1級1号となります。

脊髄=中枢神経系は末梢神経と異なり、非可逆性で損傷すると修復・再生することはあり得ません。
現代の医学でも、これを回復させる決定的治療方法は未だ発見されていません。

横隔膜ペーシング?

東野圭吾さんの小説、「人魚の眠る家」を読みました。
6歳になる少女がプールで溺れ、脳死状態となり、脳死判定と臓器提供をテーマとする問題作なのですが、
その少女は、最新式の横隔膜ペーシングを装着、人工呼吸器から解放され、
気管切開を閉じて、自宅で生活するようになります。
本当に、そんな装置があるのか、大変驚いたので、ネットで検索しました。

すると、2014年1月9日、湘南藤沢徳洲会病院は、国内で初めてALS=筋萎縮性側索硬化症の患者さんに横隔膜ペーシングの植え込み手術を実施したと掲載されていました。

横隔膜ペーシングは、呼吸のタイミングに合わせ、神経や筋肉に電気による刺激を与え、
人工的に横隔膜を動かす装置で、これにより、患者さんは、人工呼吸器を外し、
気管切開を閉じて退院、自由に喋ることができて、その上自宅での生活ができることになりました。
オペは、腹腔鏡下で実施され、横隔膜に左右2本ずつ電極を植え込んだ後、
リード線を腹腔外に出してペースメーカーに接続して完了です。

外部制御装置は、上記の大きさであり、カバンに入れて持ち運ぶことができル画期的なものです。
もちろん、自発呼吸のできない上位頚髄損傷の被害者にも適用できるものです。

レスピレーターに頼る被害者にとっては、福音をもたらすものですが、
費用はアメリカFDAによれば、10万ドル、日本円で1100〜1300万円、健保の適用はありません。
保険屋さんにとっては、悩み深い問題です。

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