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交通事故外傷と後遺障害


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.8.肋骨多発骨折の重症例 フレイルチェスト、Flail Chest、動揺胸郭?

.8.肋骨多発骨折の重症例 フレイルチェスト、Flail Chest、動揺胸郭?
 

呼吸に伴う胸郭の動き


吸気                      呼気

多発肋骨骨折のうち、
]続する3本以上の肋骨が、それぞれ2カ所以上で骨折したとき、
胸骨骨折に両側肋軟骨骨折を合併するときは、

胸郭全体との連続性を断たれ、正常の呼吸運動と逆の動き、すなわち吸気時に陥没、
呼気時に突出するという奇異な呼吸を呈することがあります。
これを、フレイルチェストと呼んでいます。
フレイルチェストは、胸部外傷の中でも最も重症例で、重い呼吸不全から死に至ることがあります。

フレイルチェストは、大きな外力が胸部に作用して発生するもので、交通外傷や高所からの墜落、
あるいは、挟圧外傷=挟み込まれたことによる外傷に伴ってみられます。

胸部打撲後の胸痛、呼吸困難、血痰、皮膚が紫色になるチアノーゼ、皮下気腫などです。
呼吸運動を観察すると、シーソー呼吸=奇異呼吸がみられるほか、
損傷部に手を当てると、肋骨骨折に伴う軋轢音を感じます。

胸腔内の合併損傷を診断する目的で、胸部の視診、触診、聴診、打診を行ったのち、
血液検査、胸部単純X線撮影、CT検査などが行われます。
フレイルチェストの治療は、気管挿管または気管切開を行い、陽圧人工呼吸を2〜3週間続けることにより、
肋骨骨折部を内側から固定し、胸郭の整復と骨癒合を達成する人口呼吸療法が行われています。
長期の人工呼吸管理では、肺の合併症が最大の問題となるところから、
人工呼吸器を使用しないで、オペによる固定も行われています。

フレイルチェストにおける後遺障害のキモ?

フレイルチェストは、肋骨骨折では重症例ですが、的確な治療が実施されれば、後遺障害を残すことは少ないのです。

4年前、43歳の男性で、この症例を経験しています。
普通乗用車の助手席に同乗中の事故で、右折中に、対向直進車の衝突を受けたものです。
傷病名は、左第2〜6肋骨骨折、左肺挫傷、左鎖骨遠位端骨折、左肩甲骨骨折で重傷でした。
左第3〜6肋骨骨折で、フレイルチェストとなっていました。

治療は、集中治療室、ICUにて、気管挿管で陽圧人口呼吸管理が続けられました。
左肺全体に肺挫傷をきたしており、主治医も酸素化が維持できるかを懸念していたのですが、
2週間で抜管できるまでに回復しました。

受傷から6カ月で症状固定、左鎖骨遠位端部の変形で12級5号、
左肩関節の運動制限で10級10号、併合9級の認定となりました。
陽圧人口呼吸管理によるフレイルチェストの治療が優先されたことにより、
左肩関節の可動域に2分の1以上の運動制限を残したもので、
これは救命の観点から、やむを得ないと思われます。

被害者は、軽度な呼吸機能の低下を訴えており、スパイロメトリー検査、
運動負荷試験で立証の努力を続けたのですが、いずれも認定基準に達するものではなく、断念しました。


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