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【2018/06/05】部位別後遺障害の見直し 外傷性てんかん

部位別後遺障害の見直し 外傷性てんかん

 

3)外傷性てんかん
頭部外傷後のてんかんの初期発作は、統計上は、約75%が1年以内となっており、開放性脳損傷は、閉鎖性脳損傷に比較すれば外傷性てんかんの発生頻度が著しく高く、陥没骨折後の発作頻度は、約30%と報告されています。

外傷で、脳の実質部に残した瘢痕は、手術による摘出以外、消去することはできません。
この瘢痕部から発せられる異常な電気的信号に、周辺の正常な脳神経細胞が付和雷同して大騒ぎをしている状態を、外傷性てんかん発作といいます。


強直性全身痙攣発作

発作には、大発作、焦点発作、精神運動発作がありますが、発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害をきたします。
高度になると痴呆・人格崩壊に至ります。

 

間代性全身痙攣

 

深刻な障害ですが、治療は、発作を抑える抗痙攣剤の内服、つまり、薬物療法が基本です。
内服で発作を抑えられないときは、発作焦点となっている脳の部分切除がなされますが、切除術が実施されたときでも、術後は、長期にわたる薬物療法が続けられます。

抗痙攣剤は代表的なデパケンRをはじめとしてフェニトイン・カルバマゼピンなどがあります。
内服を続けながら、脳波検査にて、てんかん発作を示す鋭波=スパイク波の消失を待つのです。
抗痙攣剤を内服中の女性は妊娠を避けなければなりません。

被害者側の注意点は、発作の回数に注目するのではなく、性格変化・人格低下の高次脳機能障害を、日常生活でつかみ取ることです。
性格変化や人格低下は、よほど注意していないと見落としてしまうことになるからです。

私は、保険調査員時代に、外傷性てんかん2級1号を経験しています。
神経心理学的テストの結果は、IQレベルで、小学2年生程度の知能・情緒でした。
治療先には、10回以上同行しており、季節・出来事・子どもの話も、普通にやりとりがあり、どこから見ても、一般人でしたから、検査結果には、非常に驚きました。
専門医よりは、「なにからなにまで小学校2年生ではなく、重大な判断や決断で、大きく落ち込むことが予想されるのです。」 と説明を受けました。

’焦半紊法△討鵑ん波を示す棘波=スパイク波が認められないとき?
  脳波上、大きな異常が認められなくても、予防的に抗痙攣剤の内服が指示されることが大半です。
脳波上の異常が確認されないときは、てんかん発作を発症する可能性は、基本的にはありません。

予防的に6カ月程度の抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。
脳波上、異常がなければ、内服を停止、さらに3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、治療終了です。 
後遺障害等級が認定されることはなく、将来、てんかん発作を発症することもありません。

脳波検査で、境界波ですねと言われた?
脳波検査で、α波や徐波が認められるときは、上記の説明がなされます。
やはり、抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。
脳波検査で、異常波が消失した時点で、内服を停止し、さらに、3カ月ごとに2回の脳波検査を行って、変化がなければ、治療は終了します。
後遺障害等級が認定されることはありません。

てんかん発作はないが、脳波検査で、てんかん波が認められる?
ここから、後遺障害等級の対象となるので、治療先を選択してフォローしなければなりません。
抗痙攣剤を内服し、3カ月ごとに脳波検査を受けます。
内服をキチンと守って、過激な運動を控えていれば、まず、てんかん発作の心配はありません。
てんかん波の終息時点で、抗痙攣剤の投与量を少なくしながら、さらに、3カ月ごとに脳波検査を続け、2回の脳波検査でてんかん波が認められないときは、内服を停止、さらに、3カ月ごとの脳波検査でチェック、私の経験則では、治療を完了するのに、約3年、最大で5年があります。
長期間に定説はありませんが、一般的に閉鎖的外傷で5年以内、開放性外傷では10年以内とされています。
長期であっても、必ず、脳波は正常に復帰するので、過剰な心配は必要ありません。

受傷後6カ月を経過して、てんかん波が認められるときは、後遺障害等級は12級13号となります。
多くの被害者・その家族は、脳波が安定するまで示談を延期する選択ですが、私は、受傷から6カ月を経過した時点で症状固定とし、後遺障害等級の申請をしています。

将来の治療費については、示談書で、その負担を相手損保に求めることができます。
毎日の内服と3カ月ごとの脳波検査を繰り返すだけの治療であっても、学校で体育に参加できないこともあって、お子さんのストレスは増加し、てんかん発作に悪影響を与えることも予想されます。
であれば、早期に示談解決とし、そこで手に入れた賠償金をストレスの発散に費消することが、前向きな解決と考えています。

て睇を継続しているが、意識障害を伴うてんかん発作を繰り返している?
てんかん発作の頻度と、脳神経細胞の破壊の程度で、1〜7級の後遺障害等級が認定されます。

発作の繰り返しは、周辺の正常細胞を破壊するので、どうあっても、食い止めなければなりません。
治療先は、医大系の脳神経内科もしくは神経内科を選択することになり、代表的な抗痙攣剤は、デパケンRですが、発作を抑える必要からカルバマゼピンやフェニトインなどの複数の抗痙攣剤の組み合わせが必要となるのです。
そして、抗痙攣剤の長期的な内服は、肝機能に影響を与えますから、血中濃度を確認しながら、総合的な内科フォローが必要となるのです。
これらの総合的な治療が展開できるのは、やはり医大系総合病院の神経内科となります。

このような深刻な状況であっても、私は受傷後1年を経過した時点で症状固定とし、後遺障害の申請を優先しています。
てんかん発作を繰り返している状況では、被害者の行動に大きな制限が生じます。
家から外に出るにも、いつ発作が起きるか分からず、常に、家族の見守り介助が必要となります。
車の運転は禁止されており、もちろん、1人では、バスや電車にも乗れず、就労も不可能な状態です。

示談を先延ばしにして、治療に専念しようと考えても、休業損害を払い続ける損保は0です。
家族や職業介護人の将来の介護料は、示談締結を前提に提示されているのです。
示談を先延ばしにしても、被害者や家族が、静かで落ち着いた療養環境で、てんかん発作と向き合いことは不可能なのです。
この状況では、てんかん発作に伴って、知能低下、性格変化、人格障害が予想されるので、後遺障害の申請では、高次脳機能障害のプログラムで立証をすることになります。

コ綾性てんかんの後遺障害

外傷性てんかんの後遺障害等級

1級1号

てんかん発作のため、常時介護を要するもの

2級1号

十分な治療にかかわらず、意識障害を伴う発作を多発、平均して週1回以上するもの

3級3号

十分な治療にかかわらず、発作に伴う精神の障害のため、終身労務に服することができないもの

5級2号

十分な治療にもかかわらず、発作の頻度または発作型の特徴などのため、一般平均人の4分の1程度の労働能力しか残されていないもの
モ?てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が極度に制限されるもの

7級4号

十分な治療にもかかわらず、1カ月に1回以上の意識障害を伴う発作があるか、または発作型の特徴のため、一般平均人の2分の1程度の労働能力しか残されていないもの
てんかんの特殊性からみて、就労可能な職種が著しく制限されるもの

9級10号

抗痙攣剤を内服する限りにおいては、数カ月に1回程度、もしくは完全に発作を抑制しうるとき、または発作の発現はないが、脳波上明らかにてんかん性棘波を認めるもの
通常の労働は可能であるが、
その就労する職種が相当な程度に制限を受けるもの

12級13号

発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性の棘波を認めるもの

外傷性てんかんにおける後遺障害のキモ?

脳波検査で、てんかん波が認められないものは、過剰に心配することもありません。
いずれも、症状固定時期の選択が決め手となります。

1)てんかん発作はないが、脳波検査でてんかん波が認められるときは、受傷から6カ月を経過した時点で症状固定とし、12級13号を確定させるべきです。

2)内服を継続していても、意識障害を伴うてんかん発作を繰り返している深刻な状況であっても、私は受傷後1年を経過した時点で症状固定とし、後遺障害の申請を優先しています。
てんかん発作の頻度と、脳神経細胞の破壊の程度で、1〜7級の後遺障害等級が認定されます。

3)てんかん発作に伴って、知能低下、性格変化、人格障害が認められるときは、後遺障害の申請では、高次脳機能障害のプログラムで立証をすることになります。

チーム110がサポートしますので、NPOジコイチのフリーダイアル 0120-716-110で相談してください。

※私が経験した外傷性てんかん2級1号?

この事故は、1995-3、大阪の郊外で発生しました。
被害者は39歳の男性です。
4トントラックの荷台から運転席後部のはしごを伝って道路に降りる際、通りかかった2トントラックのバックミラーに跳ね上げられ、頭部から路面に落下しました。
加害者は後日に出頭しましたが、事故現場から逃走、いわゆるひき逃げ事故でした。

傷病名は、脳挫傷・急性硬膜下血腫・頭蓋骨陥没骨折で、搬送先の病院でただちに開頭の上、骨片と血腫の除去、硬膜修復術を受けました。
さらに、2カ月後に頭蓋骨形成術を行う極めつけの重篤でしたが、順調に回復し1995-6には退院までに漕ぎ着けました。

通院で左半身不全麻痺の猛烈なリハビリ訓練中の1995-10、最初のてんかん発作を発症したのです。
意識喪失・尿失禁を伴う大発作です。
この直後から、大阪大学医学部付属病院脳神経外科に転院、再入院となりました。
病院では脳神経外科と神経内科が共同で治療に当りましたが、この被害者は症状固定の1999-5までの5年間にわたって苦しみ続けました。

外傷性てんかんは、脳挫傷・頭蓋骨陥没骨折後の後遺障害として代表的なものです。
上記の傷病により脳の実質部についた瘢痕は、手術による摘出以外にこれを消すことはできません。
この瘢痕部から発せられる異常な信号に、周りの正常な脳神経細胞が付和雷同して大騒ぎをしている状態を外傷性てんかんと呼びます。

発作を繰り返すと、周辺の正常な脳神経細胞も傷つき、性格変化や知能低下の精神障害を来します。
高度になると痴呆・人格崩壊に至る大変深刻なものです。
このように恐ろしい傷害なのですが、治療の方法は、発作を抑える抗痙攣剤の内服を続ける以外にありません。
 抗痙攣剤は代表的なデパケンR、フェニトイン、カルバマゼピンなどがあります。
これらの内服を続けながら、脳波検査にて、てんかんを示すスパイク波・鋭波の消失を待つのです。
抗痙攣剤を内服中の女性は妊娠を避けなければなりません。

先の被害者に戻ります。 私が彼を担当したのは、1998-12です。
すでに事故から4年が経過していました。
損保は、例によって休業損害の内払いを停止し、打ち切り攻勢です。
治療は、労災保険の適用を受けていたので、私は労災保険の特別支給金の申請を急ぎました。
12月中の支給は間に合いませんでしたが、翌年の1/末に振込みがなされました。
特別支給金は、給与の20%に相当する金額です。
損保から、休業損害の内払いを受けていても申請すれば支払われる労災保険独自の恩典なのです。
しかし請求そのものは、2年で時効が成立するのです。
この被害者ですが、97、98年分は支給を受けたのですが、95、96年分、金額にして168万円は、時効成立により棒に振ってしまったのです。
入院直後に治療先で、「治療費を労災保険の扱いにしてほしい!」 と懇願したのは相手損保です。
その手続きを担当したのは、損保から依頼を受けたリサーチ会社です。
「知らなかった?」 と言えば、それまでのことですが、大変やるせなくなりました。
もう一つあります。
治療費は、初診の病院が労災保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が健康保険の扱い、大阪大学医学部付属病院が指定した被害者の自宅近くの治療先はなんと自由診療の扱いです。 どうして、そんなアホなことが?
「転勤による担当者間の引き継ぎがうまく機能しなかった?」 相手損保の言い訳です。
払わなくてもいい治療費を120万円も支払って、その後に20%の過失相殺を押し付けてきたのです。
怒る気力も萎えてしまったのを、はっきりと覚えています。
拒否したことは言うまでもありません。
泥縄の保険屋さんを相手に、1999-5、症状固定としました。
被害者も弁護士に依頼し、後遺障害部分について、被害者請求の委任請求を実施したのです。
等級認定までに5カ月を要しましたが、結果、2級1号が認められました。
自賠責保険で2590万円を受領したのです。

この傷病の被害者の家族が気をつけなければならないのは、発作の回数にこだわるだけでなく、性格変化・人格低下について日常生活で十分なチェックをすることです。
性格変化・人格低下は日常生活の中でよほど注意をしていないと見落としてしまうものなのです。

私は仕事で、「小学校2年生程度の知能・情緒」 と診断された、被害者の対応をなんども経験していますが、難しい政治や経済も普通に話し、どこから見てもごく普通の一般人が多いのです。
なにかの決断に迫られたときに大きな段落に落ち込むとのことですが、分かりやすく表現すれば、なにから、なにまで小学校2年生ではないということです。

先の被害者は受傷から症状固定までに5年を要しました。
てんかん発作を多発しておりましたので、やむを得ないと判断されます。
これほどの外傷性てんかんを経験したのは30年間でたったの1回だけですが、発作に至らないものはそれこそ無数に経験しています。
一般的に外傷性てんかんの症状固定は遅れがちであるとの印象を強く持っています。
特に子どもさんの交通事故では、8年間のフォローも珍しくありません。

しかし等級認定基準を理解すれば、賠償上の打ち切りは、もう少し早く持っていくのがポイントです。
つまり抗痙攣剤の内服は積極的な治療ではないのです。
1カ月に1回程度の脳波検査と抗痙攣剤の内服を8年も続けたとしても、脳波が安定すれば、治癒したことになり、後遺障害部分の評価は0円になるのです。

交通事故そのものは、加害者の不注意を原因として発生するものが大半です。
しかしこうむった被害の回復は、被害者自身の力でつかみ取っていくものです。
加害者や損保の対応に憤っているだけでは、何も前に進みはしないのです。
私の持論ですが、ここのところは大変重要な示唆を含んでいるのです。

先の被害者は、2001-5、示談金9000万円で円満解決となりました。
自賠分と併せて1億1590万円となりました。

これ以外に労災からは月額30万円の障害年金が支給されており、これは一生涯続きます。
今後も治療を継続していくのですが、それは労災保険が負担してくれます。
てんかん発作の爆弾を抱え、就労のめどは全く立っていませんが、家族4人が生活できる基盤だけは確保できました。

 

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