概要

高速道路で先頭車の急停止に伴い、後続5台の連続衝突事故が発生、4台目に搭乗中の被害者はその衝撃で頭部をダッシュボードに激突させ、閉鎖性外傷性脳内血腫、頭部が潰れて深刻な脳内出血を発症したものである。
救急搬送され、緊急開頭手術で除圧処置を行い、その後、乳幼児の専門医院にドクターヘリで緊急転送され、再度の手術を受けた。
奇跡的に命を取り留めたが、成長に伴い発達障害の兆候を示す。
特に語彙の習熟に遅れが顕著であり、コミュニケーション能力にも問題がみられた。
主治医からは、小学校進学を前に学習障害の懸念を指摘された。

問題点

未就学児であり、学習障害は将来への懸念であり、高次脳機能障害はあくまで予想に過ぎない。
精神障害、情動障害、社会適応能力なども成長の過程を見なければ評価できないことも多く、幼児の脳障害、精神障害を計測するには、進学後、数年を経過した段階で観察する必要がある。

ところが、幼児の脳障害を専門とする主治医は、「数年を経たとしても、後天的な病気が合併する可能性を排除することができず、どうしても不正確な判断となる。」 との医師所見を示した。
両親とも相談、最新の臨床研究を重視し、高次脳を現時点で評価することと決断した。

こうして、極めて少数例である未就学児の高次脳機能障害の立証・申請を実施したものであるが、すべてが未知の経験であり、2年間、家族とともに手探りの立証作業を進めた。

立証のポイント

家族、主治医と実施可能な検査を計画、限られた神経心理学検査は以下の通りである。

①知能検査 田中ビネー、WPPSI、2年後にWISC、
②発達検査 遠城式乳幼児分析的発達検査、新版K式発達検査、DENVERⅡ、
③視覚発達 フロスティッグ視知覚発達検査、

客観的なデータが不足しており、ビデオ撮影を導入、3回の撮影を通して、映像による観察を加えた。
事故前後の日常生活の状況は、保育園の先生に幼児用生活状況報告書の記載をお願いし、A4版10ページにおよぶ、緻密な日常生活状況報告書を作成した。

頭部醜状瘢痕は、頭蓋骨の着脱があり、左額部~側頭部が隆起し、目立つ瘢痕となっていた。
面接に備えて写真も備えたが、自賠責調査事務所は、面接の呼び出しに当たって、醜状痕の大きさの計測や不足する画像の追加依頼がなされ、慎重な審査が進められた。
申請から8カ月後、自賠責調査事務所からは、「現在提出の書類のみでは判断困難なことから、以下の再調査をお願いします。」 結論を保留する回答がなされた。
そして、初診の治療先で提出済みの「頭部外傷後の意識障害についての所見」についても、転院先での再記載、最新のMRI撮影も要請された。

それらすべてに、迅速かつ丁寧は対応を続けた結果、自賠責調査事務所の高次脳審査会は、14カ月の審査期間を経て高次脳は3級3号、頭部の醜状瘢痕は7級12号、併合1級の認定となった。
  前例のない申請に2年の奮闘が続いたが、自賠責調査事務所も、未知の審査に苦慮したと思われた。