A 代表的なものを2つ挙げます。
1つは、高次脳に限りませんが、被害者に不利となる過失割合を強く押しつけてくることです。

過失割合

高次脳など、重傷事故では、被害者は事故現場から救急搬送され、実況見分に立ち合えません。
その後、意識を回復しても、事故前後の状況については記憶を失っており、なにも説明できません。
したがって、実況見分調書は、加害者の供述を基礎として作成され、過失割合が判断されています。
損保は、これらを深く検証することなく、基本過失割合を強く押しつけてくる傾向です。
したがって、原告側弁護士としては、過失割合を見過ごすことはできません。

まず、検察庁から、刑事記録を取りつけ、実況見分調書、交通事故現場見取図を緻密に検証します。

そして加害者の供述に虚偽や矛盾が感じられるときは、1年後の同じ月日、時間帯に事故現場に立ち、交通量、走行している車両の速度や交通動態などを見分し、供述の合理性を徹底的に検証します。
交通事故現場に立つと、実況見分の弱点、加害者の嘘が見えてくることがあります。
確信に至ったときは、事故現場の状況を動画撮影し、証拠として提出しています。

また、過失割合では、目撃者の証言は、なによりの決め手となります。
2010年名古屋地裁では、弁護士が、事故現場に情報提供を呼びかける張り紙や看板を設置したところ、幸いにも目撃者が名乗り出て、被害者が青信号で横断中であったことを証言しました。
この弁護士は、直後に、この事実を警察に通報し、目撃者の実況見分を実施してもらい、裁判では、証人尋問を行って、0:100の逆転判決を獲得しています。

私ではありませんが、弁護士として、見習うべき積極的な立証活動と称賛しています。

A もう1つは、介護料は、定型的な対応で、高次脳1級、2級以外では、全否定してくることです。

自賠責保険後遺障害等級別表Ⅰ 介護を要する後遺障害
等級 内容
1 1神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。
2胸腹部臓器に著しい障害を残し、常に介護を要するもの。
2 1神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。
2胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの。

自賠法では、別表Ⅰで介護を要する後遺障害等級を規定しています。
それによると、寝たきり状態の1級1号のみが、常に介護を要するものであり、2級1号となると、ときどき見守る随時介護で十分となり、3級以下では、介護の必要性がスルーされています。

将来の介護料・その他の損害の任意保険支払基準
項目 等級 内容
計算式 (月額の介護料×12カ月)×要介護期間に対応するライプニッツ係数
月額介護料 後遺障害別等級表Ⅰの1級 入院、自宅介護にかかわらず月額15万円とする。
ただし、家屋改造などにより、介護の程度が改善されるときは、減額の可否を判断する。
後遺障害別等級表Ⅰの2級Ⅱの1、2級と3級3・4号※ 月額7万50000円とする。
介護期間 後遺障害別等級表Ⅰの1級 医師の診断、裁判の動向などを勘案して、症状固定時の年齢に対応する平均余命年数の範囲内で、妥当な介護期間を認定する。
後遺障害別等級表Ⅰの2級Ⅱの1、2級と3級3・4号※ 障害の態様、機能回復の可能性、生活に対する順応性などについての医師の診断、裁判の動向などを勘案して、妥当な介護期間を認定する。

※後遺障害別等級表Ⅰの2級および等級表Ⅱの1、2級と3級3・4号に該当する被害者で、かつ、真に介護を要すると認められるときと記載されています。

保険期間の開始日がH30-1-1以降の損保ジャパン日本興亜の約款では、自賠責保険の後遺障害等級表に基づき、Ⅰの1級は、月額15万円、Ⅰの2級、Ⅱの1、2級、3級3号と4号については、真に介護を要すると認められるときに限り、月額7万5000円を支払うと規定しています。

ところが、裁判所は自賠法の常時介護や随時介護の規定には、拘ってはいません。
あくまでも、現実、実態はどうなのか? このことを重視しているのです。
したがって、高次脳では、介護の緻密な立証と獲得は弁護士の力量と評価されているのです。

原告側の弁護士が、介護の実態を具体的に立証すれば、2級1号であっても常時介護を認め、3級3号や5級2号でも、介護料は認定されています。
では、判例などを検証していきます。

1)高次脳2級1号  将来介護料は、日額8000円

自転車で下り坂の青信号交差点を横断中、対向右折の自動車の衝突を受け、高次脳で2級1号が認定された28歳、無職、家事手伝いの女性に対して、物忘れや自発性の低下の他、家族に暴力をふるう、自殺未遂をするなど、人格障害による他害行為や、自殺願望、社会的迷惑行為などの異常行動が著しく現れ、投薬で抑制していたものの、常に看視=監視や声掛けを欠かすことのできない状況を弁護士が細かく立証を行っています。

⇒裁判所は、自賠責保険のルールでは随時介護であるのに、常時介護レベルの介護日額8000円を認定、将来介護料として5470万円、損害総額1億2510万円を判決しています。

これが損保のレベルであれば、介護の必要性を理解させても月額6万5000円に過ぎません。
月額6万5000円が弁護士の力量で24万円となったのです。

2)高次脳1級1号  職業介護人による常時介護料 日額1万8,000円

青信号でT字型交差点の横断歩道を横断歩行中、右折の自動車が衝突、頭部外傷、外傷性脳動脈解離、脳梗塞などで左上肢機能麻痺と体幹機能麻痺を伴う高次脳機能障害1級1号が認定された、自営業の手伝いと家事を切盛りしていた50歳の女性に対して、弁護士は、介護の程度と日常生活動作の1つ1つを検証し、
①理解力の低下が最も重篤で、意味不明の言葉を口走ることがあること、
②放置しておくと、車椅子からの転落やガスの付け放しがあり危険であること、
③指示をしないと服薬や通院など必要なことをなにもしようとしないことなどから、
被害者の障害は重く、着替え・食事・トイレ・入浴など、日常生活の全てに介護が必要であると証拠を添えて主張し、職業人介護による常時介護料を請求しました。

⇒裁判所は、訴えの内容を精査し、被害者が、日常生活において、常に行動を看視し、指示、声かけをする介護者の存在を欠かすことができない状態と認定、その上で、日常の介護から外れ、事業復帰を希望する夫や、就業や学業をしている子ども4人の主張をくみ、職業介護人による常時介護料 日額1万8,000円、合計、9600万円を認定しています。
この女性は、1級1号ですが、寝たきりではありません。
損保は、寝たきりでないことをあげつらい、随時介護6万5000円を主張していました。

3)高次脳2級1号 職業介護日額1万5000円、家族介護日額8000円

トラック運転中の事案

これは、ご子息から相談があり、サポートをした事案です。
国道を4トントラックで直進中、資材置き場から飛び出したクレーン車が激突、クレーンの先端部が助手席に突き刺さり、助手席に同乗中の女性は即死、運転者も左眼球破裂、頭蓋骨陥没骨折、びまん性軸索損傷で高次脳2級が認定された劣悪、悲惨な事故でした。

実は、夫婦は15年以上前に離婚しており、息子は父親と別れ、母親と生活していました。
母親がガンで亡くなり、その後、息子は結婚、乳飲み子が誕生したばかりで、警察から連絡があり、父の消息やこの事故のことを知ったのですが、息子は、妻を説得し、父親を引き取ることにしたのです。

54歳の父親は退院後、息子夫婦のもとに引き取られたのですが、左眼球破裂で眼球は摘出されており、顔面の醜状瘢痕も7級レベルで、暗がりで現れると、正にゾンビの風貌となっています。
ところが、高次脳の影響か、左目に義眼を入れることを拒み、家庭内では暴言が絶えず、息子には暴力が目立ち、トラブルが絶えない状態で、若い夫婦は離婚の危機に瀕していました。

弁護士は、これらの状況を息子夫婦から聴き取り、日常の介護や被害者への見守りの大変さを陳述書にまとめ、乳飲み子がいる現状では、職業介護人の導入もやむを得ないと主張しました。

⇒結果、240日は職業介護で日額1万5000円、残りの125日は家族介護で日額8000円と、2級としては、高額の将来介護料が認められました。
事故から2年6カ月で和解が成立したのですが、8%の調整金が認められ、依頼者の弁護士費用を吸収することができ、先の父親の引取状況も考慮され、400万円の近親者慰謝料が認められました。
この事故発生状況でも、損保は裁判で15%の過失相殺と介護料0円を主張しています。

4)高次脳3級3号  将来介護料は日額6,000円

原付バイクで優先道路を直進中、一時停止を無視した無保険車と衝突したもので、37歳の男性には、高次脳で3級、他に聴力障害、嗅覚脱失、咀嚼障害を残しました。

原付衝突の事案

弁護士の立証

事故後、被害者の人格が大きく変わり、易怒性が強く、両親に対して暴言を繰り返し、我慢ができないときは暴力に発展することが頻繁でした。
そこで家族の日常の苦労を、詳しい陳述書にまとめると共に、実際に壊された物や暴力による痣などの写真を提出して明確に立証した結果、裁判所は日額6,000円の将来介護料を認めてくれました。

原告の原付に付保されていた無保険車傷害特約から回収しました。

5)高次脳2級1号

母親が67歳まで、平日は日額8000円、休日は日額6000円、67歳以降、日額8,000円
深夜、片側一車線の直線道路を自転車で走行中の18歳男性、専門学校生が、後方からの普通乗用車に追突され、外傷性脳内出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折などで、高次脳2級が認定されています。

本件事故により開頭手術・低体温療法などを受けていた被害者は意識レベルが低下していたのですが、ヘルパー職を退職し、息子のために献身的な介護を続けた母親の努力で、2年後には、作業所に通って軽作業がこなせるまでに回復を遂げました。

作業所では、軽作業をこなし、デイサービス施設では、リハビリを兼ねてボランティアスタッフとして働き、休み時間には、複雑なテレビゲームに興じるなどしており、医師やリハビリに関わった言語聴覚士らの中には、障害の程度が軽いと誤解を受け、そうした診断に基づくカルテの記載も認められました。

損保の反論

これらの外形的な事実から、損保は、以下の反論を展開しています。
①自転車が無灯火で、反対車線を走行していたため、被害者側にも10%の過失がある?
②労働能力喪失率は、障害の程度が軽いので、2級であっても100%ではない?
③高次脳2級であっても、日常生活は健常者と遜色がなく、介護の必要性は認められない?

弁護士の立証

しかし、まだらな状態の障害は厳然と残っており、
①声かけや監視がないと予定通りの行動ができないこと、
②目的地まで1人では移動できない状況であったこと、

弁護士は、見守りや付添いの必要性、またてんかん発作予防の投薬管理などについて、日常動作の1つ1つを立証するとともに、母親が元のヘルパー職に戻り、自立した生計を営むには、職業介護の導入が必要であるとして、将来介護料を請求したのです。

⇒判決では、労働能力喪失率を100%と認め、母親が67歳になるまでの平日は、日額8000円、休日は、日額6000円、母親が67歳以降は、日額8,000円の将来介護料、総額5200万円を含む損害賠償額1億8500万円が認定されました。

6)高次脳3級3号 将来介護料は日額2000円

自動二輪車で直進中、対向右折車の衝突を受け、高次脳で3級、併合2級が認定された26歳・男性・会社員ですが、なんとか自立を促そうとした親の方針により、事故後の7年間、1人住まいを続けたのですが、そのことで、死にたいと漏らすようになり、母親が毎日通いでの介護を強いられていました。

損保の反論

生涯独りです。

損保は、7年間の1人住まいの事実から、以下の3つを主張しました。

①一人で生活ができるのだから、労働能力喪失率は100%ではない?
②半自立の状態であり、障害等級は3級ではなく5級とすべき?
③将来介護料は不要?

弁護士の立証

弁護士は、専門医に診断を求め、現実的には社会人としての自立は無理であり、高次脳の等級は3級で労働能力喪失率も100%であることを緻密に立証しています。
さらに、一人暮らしを解消させ、本格的なリハビリを受けながら、本人の障害の実態に合う生活スタイルに変更させてから、損害賠償の請求訴訟に取り組みました。

⇒結果、裁判所は1日2,000円の将来介護料を認めています。

7)高次脳5級2号  将来介護料は日額2000円

4車線道路の第3車線をバイクで走行中、第4車線を走行中の相手自動車の急な車線変更により、接触を受け転倒で12級13号が認定された28歳、建設業に従事する男性は、事故後、仕事に復帰できない状態が続いていました。

弁護士の立証

高次脳の治療経験に乏しい医師が、事故直後から担当したことで、被害者は必要な検査や十分な診断が受けられておらず、立証不足により高次脳の認定は自賠責では認められていません。
弁護士は、緻密に被害者や家族の意見を聞き取り、陳述書を作成しています。
また、専門医に意見書の作成を依頼し、その上で、本人尋問を行いました。

⇒その結果、裁判所は脳挫傷による高次脳として5級2号が相当であると認定しました。
将来介護料については、日額3,000円を請求したところ、裁判所は2,000円を認めています。

8)高次脳5級2号  将来介護料は日額2000円

53歳、女性・主婦が横断歩道を歩行中、右折自動車の衝突を受けたもので、脳挫傷による高次脳7級、嗅覚脱失12級で併合6級が認定されていました。

弁護士の立証

面談により、この被害者には見守り介護が不可欠で、夫が介護をしなければ基本的な生活が維持できないことが判明したので、高次脳の専門医の診察と検査を受けて、自賠責保険に異議申立を行い、高次脳5級で併合4級となり、訴訟を提起しました。

弁護士は、裁判では日常生活における夫の介護の労苦や見守りによって減収した収入を、陳述書などで緻密に立証した結果、

⇒裁判所は、5級でありながら日額2,000円の将来介護料を認めています。

9)高次脳5級2号  将来介護料は日額3000円

38歳男性会社員の運転する大型バイクが片側2車線の青信号交差点を直進中、渋滞側車線から車と車の間をぬって対向右折した自動車の衝突を受けたもので、高次脳として5級が認定されています。

弁護士の立証

弁護士は、本件の被害者には、自発性の低下や記憶障害などが認められ、見守り、監視、声掛けの介護が必要であるとして、妻の陳述書を提出した上で、本人の証人尋問を行いました。

⇒結果、裁判所は、将来の介護料として日額3,000円を認めました。

10)高次脳5級2号 将来介護料は日額5000円

信号機のないT字路を横断中、直進中の自動車の衝突を受けた10歳の女子小学生は、高次脳で7級が認定されていました。

損保の反論

損保は、以下の3つを主張したのですが、
①飛び出をした少女に30%の過失割合が認められる?
②高次脳5級に将来介護料は必要ない?
③逸失利益の基礎となる収入は、女子平均賃金である?

弁護士の立証

この少女には、軽度な失語と同時に2つ以上のことができない遂行機能障害、記憶障害が認められたため、専門医を受診、神経心理学検査などでそれらを立証して自賠責保険に対し異議申立を行ったところ、高次脳で5級が認定され、その結果を得て、民事裁判を提起することになりました。

弁護士は、損保の主張する30%の過失割合について、刑事記録を精査した上で、相手方の著しい前方不注視や合理性のない無理な主張を指摘して反論、裁判所は、弁護士の主張を受け容れ、被害者の過失を15%に減額修正しました。

将来介護料については、5級であっても見守りが必要なことについて母親の陳述書で詳しく立証したところ、

⇒裁判所は、近親者介護料として日額5000円を認定しました。

基礎収入については、将来の可能性が裁判所でも認められ、男女平均賃金480万円で算出されることとなり、15%の過失相殺後に自賠責保険を含んで9000万円の高額な賠償金となりました。

NPOジコイチのコメント

以上の判例などから分かるように、民事裁判においては、緻密な立証が求められています。

弁護士の資質は、以下の3つで決まるのですが、
①問題を正確に理解するための幅広い知識と経験則、
②依頼人から問題点を引き出す対話力、
③勝訴に導く創造力と構成力、

これらの資質に欠けるポンスケ弁護士は、殆どが、介護の実態を明らかにすることなく、赤本から過去の判例を引用して高額な介護料を単に請求しているのです。
裁判では、斬り捨て御免で、介護の必要性が立証できても、低額な介護料しか認定されていません。

後にも詳しく述べていますが、家族が仕事に就いているときは、1年間の土日・祝日、95日間を家族介護、270日間は、職業介護人による介護として、細かく介護料を請求することになります。

一般的には、家族介護125日、職業介護240日となるのですが、レスパイト=家族介護者にも休息が必要であり、国民の休日プラス土・日を基本に、30日間を介護者の休息日として請求しています。

家族介護でも、母親が67歳までは家族介護で、67歳以降は職業介護で請求することになります。
上記にレスパイトの概念を導入して請求することは、もはや常識となっています。