1)高次脳2級1号

20歳の女子大生が、交差点の横断歩道を歩行中、右方からの自動車に跳ね飛ばされたもので、高次脳として2級1号が認定されています。

本件の問題点

事故後、被害者は、開頭術後の頭蓋形成術や顔面の醜状痕の形成術もあり、複数回のオペを繰り返しました、退院後は、意欲の低下、精神的な落ち込みもあり、自殺願望が強く現れていました。
このため、家族は片時も目を離すことができず、大変辛い状況での介護が続いていました。

損保の反論

損保は、将来介護料について、被害者の母親は専業主婦なので、67歳までは職業介護人をつけずに計算すべきであると主張したのですが、

弁護士の立証

弁護士は、母親も休息する時間を確保するべきであること、つまり、専業主婦であったとしても、レスパイト※が必要だという主張を行いました。

※レスパイト
レスパイト、respiteは小休止を意味しています。
レスパイト‐ケア、respite careとは、介護の必要な高齢者や障害者のいる家族へのさまざまな支援で、家族が介護から解放される時間を作り、心身疲労や共倒れなどを防止することが目的で、デイサービスやショートステイなどのサービスを指しています。
日本では1976年に、心身障害児(者)短期入所事業の名称で、ショートステイとして始まりました。
当初は、ケアを担っている家族の病気や事故、冠婚葬祭などの社会的な事由に利用要件が限定されていましたが、現在は介護疲れといった私的事由でも利用できるようになっています。

⇒その結果、裁判所は将来介護料として、1週間の内5日は、母親の介護として日額6000円、残りの2日は、職業介護人、日額1万5000円を認め、総額7300万円の将来介護料を認定しました。

逸失利益について損保側は、例によって被害者は事故当時、未就労の大学生であり、基礎収入は大卒女性平均賃金を採用すべきではないと主張しましたが、当然に退けられ、基礎収入は大卒女性平均賃金が採用され、近親者慰謝料600万円、3200万円の調整金を加えて、最終金額1億8000万円の和解解決が実現しました。

2)高次脳1級1号

58歳男性が、自動車を運転して信号待ち停車中にトラックが追突し、前方に押し出され、交差点内を走行中の自動車に衝突したもので、高次脳と身体麻痺などで1級1号が認定されました。

弁護士の立証

被害者の長男は、事故で1級障害を負った父親を自宅で介護するため、家を新築し、その一部を介護用に改造しようという計画を立てており、弁護士が相談を受けたときは、マンションを転売し、土地はすでに購入済みの段階でした。
そこで、弁護士は、介護用に改造した部分の立証を緻密に行い、裁判所は、住宅改造費として1300万円を認定しました。

⇒裁判所は、将来介護料について、以下の2つを認定しました。
①年間270日間は、職業介護料として日額2万2000円、
②土日、祝日の年間95日間は、家族介護として日額8000円、
職業介護と家族介護では、これまでは、240日と125日に分けることが基本でしたが、弁護士は、家族介護者にも休息が必要であるとして、レスパイトを主張したところ、裁判所は、土日プラス祝日をベースに、30日間を介護者の休息日として、この間の職業介護を認めました。

NPOジコイチのコメント

憲法の要請では、介護する側にも人生があり、例え、母親、専業主婦であっても、1人の人間として休息や充電期間は不可欠であるとされています。
本件を担当した弁護士は、交通事故訴訟において、率先して介護者のレスパイトの必要性を主張し続けてこられ、その結果、裁判所も多くの判例でレスパイトを取り入れるようになっています。