(1)介護料は、等級で決まるものではなく、被害者の支障の実態で決まります?

介助・介護メータ

日常の生活 3
介助・介護
2
看視・声掛け
1
見守り
0
自立
着替え 3 2 1 0
歯磨き・洗顔 3 2 1 0
食事 3 2 1 0
トイレ 3 2 1 0
入浴 3 2 1 0
服薬 3 2 1 0
1)遂行機能障害 3 2 1 0
2)記憶障害 3 2 1 0
3)失語 3 2 1 0
4)半側空間無視 3 2 1 0
5)地誌的障害 3 2 1 0
6)失行 3 2 1 0
7)失認 3 2 1 0
8)社会的行動障害 3 2 1 0
9)てんかん発作 3 2 1 0
10)尿崩症※ 3 2 1 0
合計        

介助・介護メータによる介護レベルの判定

スコア 介護レベル
①18点以上 認定等級に関係なく、常時介護の必要な状態です。
②10~17点 看視・声掛け、見守りが必要となる重度な介護が必要な状態です。
③5~9点 中程度の介護となります。
④1~4点 見守りを中心とした軽度な介護となります。
⑤0点 介助・介護を必要としないのは、すべてが自立しているときに限られます。

例えば、着替えでは、整理タンスから必要な下着を自分でピックアップして着替え、着替えた下着を風呂場の洗濯籠に入れることができれば、自立していることになります。
言わなければ、着替えようとしないのであれば2、手伝わなければ、着替えもできないは3となります。

上・下肢に麻痺を残していて、着替え、歯磨き・洗顔、食事、トイレ、入浴すべてに介助が必要なときは、常時介護が必要となります。

服薬も、食後、テーブル近くの薬箱から自分で薬を出して内服していれば自立ですが、指摘しない限り内服をしないとなると、看視・声掛けの2となります。
外傷性てんかん、尿崩症では、内服を遵守しなければならず、見守りも神経質でなければなりません。

1)~8)の高次脳特有の症状は、支障やエピソードを細かくチェックし、立証することで、具体的な介護料の請求につなげていくのですが、3)失語、8)社会的行動障害の内、人格障害は、ビデオによる立証が便利、かつ、有用となります。

高次脳の認定等級が、2級1号、3級3号であっても、スコアが18点以上であれば、その詳細を立証することによって、常時介護料を請求することになります。

5級2号であっても、日常生活における支障を立証することで、裁判所は、日額1000円、2000円、3000円、5000円の介護料を認定しています。
上記の介助・介護スコアを利用して、個々の被害者の具体的な支障を立証してください。

1)遂行機能障害

2もしくは1に該当します。

生活をする上で必要な情報を整理、計画して処理していく一連の作業が困難になります。
遂行機能障害では、PLAN=計画、DO=実行、SEE=確認が、困難な状態となります。
○指示されたことは、取り掛かるが、自分から、積極的には、なにもしない。

例えば、食器を洗って! と指示すると、食器は洗いますが、洗った食器を水切り籠に入れ、布巾で拭いて食器棚に戻すことはできない、つまり、2つ以上のことを同時におこなうことができません。

例えば、窓を拭くように指示すると、隣の窓に移ることなく、一貫して同じガラス窓を拭き続ける。

○看視・見守り・必要な声掛けがないと、作業ミスや勘違いが連続します。

2)記憶障害

レベルによって、3、2、1に該当します。

○5分前に話した内容を忘れるなど、短期記憶力に著しい障害がある。
○買い物を頼んでも、必要なものを買い忘れてしまう。
○物忘れを防ぐためにメモをしていても、メモの存在自体を忘れてしまう。
○約束した日時を記憶できない。
○あちこちに物を置き忘れ、いつも捜し回っている。
○日付・曜日・時間が理解できない。

3)失語

レベルによって、3もしくは2に該当します。

○うまく話すことができない。
○同じ言葉を何度も繰返す。
○簡単な単語が出てこない、本が読めない。
○相手の話やテレビで放映している内容は理解できているようでも、自分の意思表示はできない。
○話していることが相手に思うように伝わらず、なん回も繰り返さなければならない。
○こちらの話しは正しく理解しているようであるが、返事が言葉、文章にならず、会話が成立しない。
○鈴や時計の音を聞かせても、なんの音か?理解できない。
聴覚失認とは、聴力は保たれているものの、語音の区別ができない障害です。

4)半側空間無視

2もしくは1に該当します。

自分が意識して見ている空間の片側、多くの例で、左側を見落とす障害です。
○食事の際に左側の食べ物を食べ残す。
○ドアを開いて、通過するときに、左側をぶつける。
○車椅子や歩いて廊下を移動していて、だんだん右側に寄っていくなどの状態。

5)地誌的障害

3に該当します。

○自宅近くの商店街に出かけても、道が分からなくなり、一人で自宅に戻れない。
○近所の見取り図を描くように指示してもできない。
○いつも出かける近所のスーパーにたどり着けず、また自宅に帰ってくることもできない。
  ○地図を描いて渡しても、これを見ながら探すことができない。
○右折もしくは左折した途端、自分がいる場所が分からなくなる。

6)失行症

3もしくは2に該当します。

今までできていた行動ができなくなることを失行症といいます。
○手足は普通に動かすことができるのに、意図した動作や指示された動作がどうしてもできない状態となり、靴の紐が結べない、ブラシで髪を梳かす、箸を使って食事ができなくなります。
○リハビリで作業療法を指示されても、動作が緩慢で、なにをやらせるにも大変な時間がかかります。

7)失認

3もしくは2に該当します。

失認とは、認知識別能力の障害のことで、具体的には、触覚失認、聴覚失認、視覚失認、身体失認、病態失認の5つに分類することができます。
失認症とは、今まで認識できていたことが、認識できなくなることです。

8)社会的行動障害

レベルによって、3もしくは2に該当します。

○対人関係がうまくいかない、良好に維持することができない。
○失語症との関わりがありますが、意思の疎通がうまくできない。
○羞恥心がなくなり、暑ければ、他人の前でも、平気で裸になってしまう。
○易怒性 突然キレて怒り出す。
○人格障害ですが、こだわりが強く、情緒が不安定で、突然、暴力的で他害行為におよぶ。
○お米や醤油、トイレットペーパーなど、自宅に十分ストックされているのに、毎回、大量に購入する。
○カッターで手首を切るなどの、自傷行為、自殺願望。
○理解力の低下が深刻で、意味不明の言葉を口走る。
○手や足を無意味にパタパタ動かし、止めることができない、常動運動に陥る。
○嗅覚の脱失、やかんの空だき、初期の火災に気がつかない。
○排尿・排便障害、

9)てんかん発作

3に該当します。

1日に2ないし3回の抗痙攣剤の内服を遵守する必要があり、さらに、抗痙攣剤を内服していても、1カ月に不定期に1、2回の痙攣発作を繰り返しているときは、一人の外出はできません。

10)尿崩症

3もしくは2に該当します。

頭部外傷を原因とする中枢性尿崩症では、1日、朝晩の2回、抗利尿ホルモン作用のあるデスモプレシンを点鼻しなければなりません。
これを怠ると、脱水症状により、死に至ることがあります。

(2)職業介護と家族介護、そしてレスパイトの導入?

①家族介護と職業介護?

介護する家族が仕事に就いているときは、職業介護人に介護をお願いしなければなりませんが、土日、祝日は家族介護であり、職業介護240日と家族介護125日は、常に2本立てとなっていました。

事故当時、専業主婦であっても、近い将来に就労を計画しているときは、その蓋然性が立証できれば、職業介護人の導入が認められています。

②介護料?

職業介護人の介護は、地域によってサービスの内容や料金に差があります。
地元の介護サービスを調査し、被害者の支障の状態から、介護サービスの内容を精査して、業者を選定することになります。

裁判では、損保側は、症状はいずれ改善するとか、公的介護制度を適用すれば、月額4万円の介護料で足りるなどの乱暴な主張をしてきます。
当然に、どうして、その業者を選んだのかも議論されることになるのです。

「原告には、対人関係を良好に維持できない、意思の疎通がうまくできない、羞恥心がなくなり、暑ければ、他人の前でも、平気で裸になること、突然キレて怒り出す易怒性、こだわりが強く、情緒が不安定で、突然、暴力的で他害行為におよぶ人格障害が見られ、それらを理解して、温厚で包容力のある、いつも決まった職業介護人に介護をお願いする必要があったので、ここを選びました。」
など、キッパリと選択した理由を説明しなければなりません。
料金が高いので、良いサービスが受けられると思いました? これでは、笑いものになります。
きめ細かく、配慮しなければなりません。

②介護者にレスパイトを?

平成22年以降、介護する側にも人生があり、例え、母親、専業主婦であっても、1人の人間として休息や充電期間は不可欠であるとして、裁判においても、介護人の休息を求める事例が増えてきました。
レスパイトとは、小休止を意味する言葉です。
介護人にも、レスパイトが必要であるとの議論が始まったのです。
その結果、裁判所は将来介護料として、家族介護100%であっても、1週間の内5日は、母親の介護、残りの2日は、職業介護人の導入を認めたのです。

もう1つのパターンは、職業介護と家族介護の組み合わせですが、年間270日間は、職業介護料、土日、祝日の年間95日間は、家族介護を認めています。
従来は、職業介護240日と家族介護125日に分けることが基本でしたが、家族介護者にも休息が必要であるとして、レスパイトを主張、裁判所は、土日プラス祝日をベースに30日間を介護者の休息日として、この間の職業介護を認めました。

今後、弁護士は、高次脳における将来介護料では、家族介護にレスパイトの概念を取り入れて請求しなければなりません。

※中枢性尿崩症(ちゅうすうせいにょうほうしょう)

脳の下垂体の後葉からは、抗利尿ホルモン、バソプレシンが分泌され、腎臓に働きかけて水分の再吸収を行い、排泄する尿量を減らしつつ、体内の水分を調節しています。
ところが、頭部外傷、頭蓋底骨折やびまん性軸索損傷により、脳内の下垂体に伝わる神経系にダメージを受けると、抗利尿ホルモンの分泌が減少し、水分再吸収が行われず、尿を排出し続ける状態となります。多尿により、喉が乾き、水分を多量に欲する尿崩症が起こるのです。
抗利尿ホルモンの分泌の低下を原因とする尿崩症は、中枢性尿崩症と呼ばれています。

検査による立証

泌尿器科で、1日の尿量の測定、尿の濃度を調べる尿浸透圧、血中浸透圧の検査を行ないます。
続いて、水制限試験、水分をまったく摂取しないで尿量、尿浸透圧を調べる試験を行ないます。
また、抗利尿ホルモンを注射して尿量が増加するかどうかも調べます。
1日の尿量が5?以上あり、尿浸透圧が低く、血中浸透圧が高いと尿崩症と確定診断されます。

水分をまったく摂取しない状態で尿量が減少すれば、それは精神的な疾患で多飲多尿になったものであり、心因性尿崩症と診断されます。

水分をまったく摂取しない状態でも尿量が減少せず、抗利尿ホルモンを注射すれば尿量が減るときは、中枢性尿崩症であり、尿量が減少しなければ腎性尿崩症と診断されます。

治療法

抗利尿ホルモン作用のあるデスモプレシンを付属のチューブで鼻腔内に投与します。

デスモプレシン点鼻液

デスモプレシン点鼻液

効果は30分内に現われ、6時間以上続くので、朝起きたときと夜寝る前に用います。
中枢性尿崩症では、脱水症を防止するためにデスモプレシンの点鼻を一生続けることになります。
腎性尿崩症では、水分を十分に摂取することが大切で、逆に、心因性尿崩症では、水分を摂取し過ぎないよう注意しなければなりません。

尿崩症における後遺障害のキモ

泌尿器科で、1日の尿量の測定、尿の濃度を調べる尿浸透圧、血中浸透圧の検査を行ないます。
1日の尿量が5?以上あり、尿浸透圧が低く、血中浸透圧が高いと尿崩症と確定診断されます。

確定診断がなされたときは、11級相当が認定されます。