1)高次脳1級1号 女性の働く権利は、憲法で保障されている、

19歳女性が、原付バイクを運転して交差点を直進中、対向右折の大型貨物車と衝突したもので、高次脳1級1号と右片麻痺の障害を残しました。

被害者には、事故当時1歳の弟がおり、母親は仕事を一時やめて子育てに専念していたが、弟が保育園に入る年齢になれば、元の外資系証券会社の仕事に復帰する予定でした。

損保の反論

損保側は、例によって、母親による介護を前提として将来介護料を算出すべきであって、本件では、職業介護人は不要であること、将来の介護雑費も高額過ぎるとの主張をしてきましたが、

弁護士の立証

弁護士は、憲法第13条、14条、25条に明示されている女性の働く権利と母親の職場復帰への思いをシッカリと主張したところ、

⇒裁判官は、介護者である母親が就労する機会を損なわないよう、結果的に以下のパターンで将来介護料を認定しました。

介護の期間 介護の内容と介護料
①被害者の弟が6歳になるまでの5年間 家族介護で日額8000円
②被害者の弟が7歳から23年間 (家族介護+職業介護)÷2=日額1万800円
③母親が70歳以降の34年間 職業介護 日額1万3600円

将来の介護雑費、800万円については、すでに消費しているおむつ代などの消耗品の使用実績に介護ベッド、車椅子などの耐用年数から割り出した買い替え費用を合算したものであり、高額過ぎるとの損保側の主張は排除されました。

過失割合の10%を相殺して、住宅改造費の600万円、遅延損害金の2150万円も認められ、総額2億5000万円の高額判決となりました。

NPOジコイチのコメント

損保側に言わせれば、家族介護なら、高くても日額8000円前後で済みますが、職業介護人となると、高い地域では、日額1万8000円を覚悟しなければなりません。
事故当時、専業主婦であれば、当然のように、母親による介護を前提として将来介護料を算出すべきと主張してきます。
ところが、専業主婦だったから、女性だからといって、被害を受けた子どもや家族の介護に一生涯、専念しなければならない? そんな決まりはありません。
本件では、憲法論が展開され、女性の権利がシッカリと主張されたことにより、裁判所もそれを全面的に認め、母親が将来職場に復帰した後の職業介護を認めたという画期的な判決です。

2)高次脳1級1号 事故前から、母親は有職者である、

路外の施設に入ろうとしたA自動車と対向直進中のB自動車が出合い頭衝突し、A車に同乗中の19歳男性、大学1年生が、高次脳と四肢体幹麻痺で1級の後遺障害を残しています。

損保の反論

被害者の母親は、パートの塾講師をしており、週に2日は職業介護人の助けが必要であったが、損保側は、将来の介護料は、母親が家族介護をすれば事が足りるので、職業介護人の必要はなく、被害者は事故当時大学生で、卒業できなかったため、逸失利益の基礎収入は大卒平均より下げるべき、また、住宅改造費のうち、バリアフリー化によって家族が受ける利益分を控除すべきであると主張しました。

弁護士の立証

事故以前、塾でパートの講師をしていた母親は、今後も自らが備えている知識や技術を生かした仕事に就き、生徒との触れ合いを通して自己実現を図りたいと考えていました。

弁護士は、母親の考えを丁寧に説明して、家族介護と職業介護の併用が必要であると主張しました。

⇒結果、裁判所は、母親が67歳になるまでは、日額1万1500円の職業介護を認定しました。

逸失利益については、被害者は事故当時、大学1年生でしたが、交友関係や就学状況から、事故がなければ順調に卒業し就業できていたであろうという高度な蓋然性があったことから、年間680万円の大卒平均賃金を基礎収入とする逸失利益、1億900万円を主張、

⇒裁判所は、これを認定しました。

住宅改造費については、改修工事全体の金額、2200万円の内、被害者の介護生活に必要なバリアフリー化部分1000万円のみを請求したのですが、損保側からは、バリアフリー化により家族が受ける利益分を控除すべきとの反論がなされました。

⇒裁判所は、バリアフリー化により家族が受ける利益は、副次的なものに過ぎないと判示して1000万円を認定しました。

損保側の強引な主張は、ことごとく退けられ、後遺症慰謝料は、本人2800万円、家族600万円の合計3400万円が認定され、1200万円の遅延損害金を含めて2億4700万円の高額判決となりました。

NPOジコイチのコメント

先の事案と異なり、本件では、事故前から母親は、パートで塾の講師をしています。
そうであっても、損保側は、パートをやめれば、母親の家族介護で事が足りると主張しています。

被害者が大学を卒業できなくなったのは、本件事故による高次脳と四肢体幹麻痺を原因としていますが、そうであっても、大学を卒業していないとして、大卒平均賃金を基礎収入とすべきでないと主張しているのです。

住宅改造費では、被害者の介護生活に必要なバリアフリー化部分1000万円のみを請求したのですが、バリアフリー化により家族が受ける利益分を控除すべきとの主張を押し通してきました。
損保なるものは、なんでもありで、江戸時代、病人の布団をも剥いで持ち帰る金貸しにソックリです。

本件を担当した弁護士は、大学1年で事故に遭い、高次脳と四肢体幹麻痺で、残る生涯を台無しとしてしまった被害者とその家族の無念さを主張すると共に、各費目に対して緻密な立証を行いました。
その結果、大変高額な賠償が実現できた好事例と思われます。