1)高次脳2級1号 支援学校・母親の送迎・母親・教員の陳述書

8歳、小学校3年の男児が住宅街道路を横断中、右方から走行してきた加害車両に跳ね飛ばされたもので、高次脳2級1号が認定されています。

実際の障害は、相当に重く、元の小学校に復学することができず、母親は、家庭での介護のほか、支援学校に通学させるため片道1時間以上かけて送迎をしていました。

損保の反論

それであっても、損保側は、高次脳2級では、家族の見守り程度の介護で済むので、介護料は日額3000円で十分と主張しています。
元々の損保基準では、月額7万5000円であり、月額9万円は大盤振る舞いをしたことになります。

弁護士の立証

これに対して、弁護士は、被害者の状態、介護の実態を明らかにして、母親が67歳になるまでは、家族介護として日額6000円、67歳以降は、職業介護として日額1万5000円が必要であると主張し、

⇒裁判所は、これを認定しています。

支援学校への送迎交通費700万円、慰謝料については、本人分として2370万円、両親に対して600万円、和解調整金2860万円も認定され、総額1億7000万円が支払われました。

2)高次脳3級3号 併合2級 子どもの高次脳専門病院・対人保険金1億5000万円

父親が運転する大型貨物車に幼児・男の子が同乗中、後方から走行の大型貨物に追突を受けたもので、事故後13年を経過して高次脳で3級3号、複視で12級、併合2級が認定されました。

治療は、事故直後から継続されていましたが、小学校に上がっても改善が得られず、地方の主治医は、子どもの高次脳機能障害の知識がなく、結果として放置されていた事案です。

弁護士の立証

相談を受けた弁護士は、現在、被害者が居住している北九州地区で子どもの高次脳の診断ができる専門病院を探したのですが、残念ながら、どの治療先も、子どもは対象外で、受診が不可能でした。
そこで、遠方ですが、首都圏の子どもの障害を専門としている治療先に誘導し、専門医を受診、必要な神経心理学的検査が実施された結果、自賠責調査事務所は、高次脳3級3号を認定しました。

相手車は、対人保険金1億5000万円の加入であり、総損害額1億8900万円に届きません。
そこで、加害者には、調停を申し立て、損保からは、1億5000万円の支払いを受けました。

その余の損害賠償は、加害者の勤務先である運送会社を訴えることとしました。
裁判所における協議で、運送会社は1500万円を自社で負担することを提案してきました。

⇒対人保険から1億5000万円、自賠責保険から2400万円、運送会社から1500万円で、総損害額1億8900万円に届いたので、和解による解決となりました。

13年間の付添介護料2400万円、将来の介護料5200万円は、上記の総損害額に含まれています。

3)高次脳1級1号 市役所の支援介護人・主治医の意見書・両親、教員、介護人の陳述書

9歳、小学校4年生の男児が、信号機のない横断歩道を歩行中、普通乗用車に跳ね飛ばされたもので、高次脳として1級1号が認定されています。
被害者は事故後、市役所が提供した介護人付きで、なんとか小学校に通学していました。

損保の反論

横断歩道を歩行中であるのに、損保側は10%の過失相殺を主張してきました。
当然ながら、裁判所は、これを却下しています。

さらに、子どもは障害を負っていても回復する見込みが大きいので、将来介護料は少なくてよいと主張したのですが、

弁護士の立証

弁護士は、回復は困難という担当医の意見書に加えて、両親の陳述書、学校の教師、市役所の介護人から、いかに介護が大変であるかという陳述書を回収し、介護の必要性を丁寧に立証したところ、

⇒裁判所は、弁護士が請求している将来の介護料、職業介護は日額1万8000円、家族介護は日額1万円を認定しました。

住宅改造費は1000万円、後遺障害慰謝料は、本人分が3000万円、両親が900万円、和解調整金3600万円、既払い金を控除しても2億6000万円が支払われました。

4)高次脳3級3号 子どもの高次脳専門病院・特殊支援学校・専門医の意見書

7歳、小学校2年生の男児が自転車で横断歩道を走行中、赤信号を無視した乗用車に跳ね飛ばされたもので、専門の治療先で検査立証を行い、高次脳で3級3号が認定されています。

損保の反論

加害者は実刑判決で収監されているのですが、損保側の主張は、以下の傍若無人なものでした。
①男児の認定されるべき等級は、3級ではなく、5級相当と思われる?
②普通学級に通学しており、将来介護料は必要ない?
もっとも、3級が認定されているので、仮に認めるとしても将来介護料は日額800円が妥当である?
③子供は将来的に回復するため、逸失利益も100%でなく70%で十分?

弁護士の立証

弁護士は、少し遠方ではありましたが、子どもの高次脳の立証に実績のある専門病院を紹介し、専門医の診断により、後遺障害診断書をまとめ、自賠責保険に申請しました。
結果、3級3号が認定され、損害賠償請求訴訟を提起する流れとなりました。

「なんとか、普通学級を卒業させたい!」
父親の強い望みがあり、被害者は、普通学級に通学していたのですが、
①授業についてゆくのが困難な状況があったこと、
②事故による障害のため、学校内でいじめなどの問題も発生していたことから、
専門医の診断と進言を受け入れて、裁判の途中で特殊支援学校に転校しました。

弁護士は、専門医から適切な意見書を得て、男児の障害の程度について緻密な立証を行った上で、将来介護料を日額4000円、母親が67歳以降は6000円が必要であると主張しました。

⇒裁判所は損保側の反論をすべて却下し、弁護士が積算した請求額をほぼ認めるかたちで和解を成立させることができたものです。

5)高次脳5級2号

女児の逸失利益の基礎収入に、賃金センサス・全年齢の全労働者平均賃金を適用
10歳、小学校4年生の女児が信号機のないT字路を横断中、右方からの直進自動車に跳ね飛ばされ、高次脳5級2号が認定されています。

当初は7級4号の認定であり、損保は、7級に基づき、自賠責保険1051万円を含んで1700万円の損害賠償額を提示していました。
しかし、等級、損害賠償額のいずれにも納得できないご両親は、弁護士に相談したのです。

損保の反論

①事故発生状況から、飛び出をした女児に30%の過失割合が認められる?
②高次脳5級2号に将来の介護料は発生しない?
③逸失利益は、女子の平均賃金を用いるのが相当?

弁護士の立証

弁護士は、子どもの高次脳に特化している治療先を紹介、追加的に神経心理学的テストを受け、専門医の作成した新たな後遺障害診断書を回収、自賠責保険に対して異議申立を行った結果、上位等級5級2号が認定されたので、民事訴訟を提起しました。
弁護士は、刑事記録を精査し、相手の前方不注視や無理な主張を指摘して反論、認めたとしても15%が限度と主張したところ、

⇒裁判所は、女児の過失を15%と認定しました。

将来介護料については、5級であっても見守りが必要であることを、母親の陳述書で詳しく立証し、

⇒裁判所は、近親者介護料として日額5000円を認めました。

女児の逸失利益では、弁護士は、将来の可能性を考慮すると、男女平均賃金480万円を基礎収入とすることが妥当であると主張し、裁判所は、これを追認しました。
結果、15%の過失を相殺しても、自賠責保険を含んで9000万円の損害賠償額を実現できました。

NPOジコイチのコメント

子どもの高次脳について5例を紹介しました。

1)最適な治療先について?

成長期にある子どもの高次脳機能障害では、小児科が対応していますが、障害の程度を立証することが大変難しく、高度な専門医でなければ、ほぼ、お手上げ状態となります。
そして、医療が手薄な地方では、子どもの高次脳を診断してもらうことは困難な現状があります。

それらの事情から、NPOジコイチも、国立成育医療研究センターを頼り切っています。
これまでに多くの被害者の神経心理学的検査などをお願いしており、実績を挙げています。
2017年8月の弁護士を対象とした研修会では、こちらの先生に、「子どもの高次脳機能障害について」の講演をお願いしております。

名称 国立成育医療研究センター
所在地 〒157-8535 東京都世田谷区大蔵2-10-1
予約センター 03-5494-7300

治療先の小児科から紹介状を取りつけ、予約センターで予約の上、総合診療部を受診します。
その後、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科などを回り、紹介を得て発達評価センターで検査を受けることになります。

発達評価センターでは、高次脳機能評価や認知機能評価、全般発達・全般知能の評価、運動機能評価、感覚機能評価、言語評価、パーソナリティに関する評価などを行っています。

2)子どもの高次脳、症状固定の時期?

わが子の交通事故では、多くの親は、さらなる回復を強く期待して、症状固定を遅らせ、後遺障害の適正な診断を受ける機会を逸する傾向が認められます。

確かに、わが子の障害を認めてしまうのは、苦渋の決断ではありますが、早い段階から専門医による適切な診断を受け、立証作業に入り、医療上の援助を受けることは、子どもにとっても良い結果を得ることができるのです。

3)実際の立証では?

成長期の子どもでは、神経心理学的テストの数も少なく、高次脳機能障害のレベルを定量的に評価することが大変困難です。
NPOジコイチでは、チーム110のメンバーが、両親や支援学校の関係者などから、日常生活や学校生活の困難さについて緻密な聴き取りを行い、介護の大変さを陳述書にして立証しています。

5歳の男児では、4歳の妹、妹の友達と遊ぶ様子をビデオ撮影し、遊びの中から、異常行動を立証したのですが、これは、先の治療先の専門医より助言をいただいて実施しました。

4)損保側の主張?

被害者が成長期の子どもでは、多くの損保は、「子どもは回復する見込みが大きい?」 特段の根拠もなく、そのように主張して、将来介護料や住宅改造費などを大幅に減額してきます。

両親は、回復する見込みに期待を抱くのですが、損害賠償上は現実を見極め、実態を積み上げて立証、主張していかなければなりません。

ときとして、ご両親とぶつかることもあるのですが、専門医の協力を得て、冷静な見通しを説明してもらうことにより、問題解決を果たしています。

5)義務教育終了までの年少女子の逸失利益、基礎収入?

東京・大阪・名古屋地裁の民事交通部は、幼児・生徒・学生の基礎収入については、原則として、賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金を適用すると提言しています。

現在も、逸失利益における男女間の格差は先送りとされているのですが、年少女子の死亡逸失利益に限っては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率を45%とすることで調整する方式が定着しつつあります。

後遺障害逸失利益については、男女間格差が放置されたままの状態ですが、H14-5-31、大阪地裁は、併合8級が認定された小学校2年生の女児の後遺障害逸失利益について、基礎収入に平成11年賃金センサス・学歴計全年齢の全労働者平均賃金を適用しています。

本件事故においても、弁護士は、10歳、小学校4年生の女児の逸失利益で、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金を適用して算出し、裁判所は、これを認定しています。
東京・大阪・名古屋地裁の共同提言では、男女間格差の問題は先送りで確定していませんが、弁護士がシッカリ主張して請求することで、男女計の全労働者平均賃金は認められているのです。

H27年賃金センサス
  基礎年収額 3地裁共同提言 3級3号 男女間格差
男女計 489万2300円 先送り 6016万2000円 ▲719万円
男子学歴計 547万7000円 6735万2000円  
女子学歴計 372万7100円 4583万3000円 ▲2151万9000円

後遺障害逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
被害者:10歳の男児と女児、後遺障害等級:3級3号、労働能力喪失率:100%、
労働能力喪失期間:18~67歳まで49年間、
49年間に対応するライプニッツ係数の計算は、
10~67歳までの57年に対応するライプニッツ係数は18.7605
10~18歳までの8年のライプニッツ係数は6.4632
よって、18.7605-6.4632=12.2973

逸失利益の計算式

男女計 489万2300円×100%×12.2973=6016万2000円
男子学歴計 547万7000円×100%×12.2973=6735万2000円
女子学歴計 372万7100円×100%×12.2973=4583万3000円

10歳女児退き粗収入を男女計にすると逸失利益は、6016万2000円となり、男子学歴計と比較すると719万円少ないが、女子学歴計との比較では、1432万9000円多いことになります。

Q 年少女子とは、なん歳までを言うのでしょうか?

A 以下、2つの理由から、義務教育終了までは、この方式を採用することで定着しています。

①.高校進学に伴い、将来の進路や職業選択について、ある程度具体化するので、あらゆる職種に就く可能性を前提とした全労働者平均賃金を使う根拠が薄れること、
②.高校生では、同年代で既に就職している者もいて、それとのバランスを欠くこと、
ただし、高校女子にも全労働者平均賃金を用いた判例もあり、生活費控除率をなん%にするかもあわせて、個別具体的に検討・立証していくことになります。

6)ともかく、早期に相談を?

これまでの訴えの効果なのか?
最近では、比較的早期に、無料相談会に参加される傾向です。
子どもの高次脳では、6カ月を経過すれば、立証作業に取り掛かっています。

できるだけ早く、NPOジコイチのフリーダイアル0120-716-110で相談してください。

フリーダイアルで概要をつかめたら、交通事故無料相談会に参加してください。

無料相談会には、連携弁護士がボランティア参加しています。
損害賠償における問題点は、面談して直接相談することをお勧めします。

もちろん、セカンドオピニオンを求めることで、構いません。

※幼児・生徒・学生の逸失利益の算定方法について

1)3地裁民事交通部の共同提言

1999年11月、東京・大阪・名古屋の三地裁民事交通部の共同提言による指針を発表しています。
①基礎収入は、原則として、賃金センサスの全産業計・企業規模計・学歴計・男女別全年齢平均賃金とし、ライプニッツ方式で中間利息を控除する方式で算定すること、
②被害者が大学進学を確実視されるときは、大卒の平均賃金の適用ができること、

2)男女間格差の問題

男女間格差の問題について、三地裁共同提言では、是正の必要性およびその可否について多くの検討すべき要素があり、直ちに解決することは困難として先送りしています。

3)年少女子の死亡逸失利益の算定

H13-3-8、東京地裁判決
河辺義典裁判長は、女子小学生の交通事故死の逸失利益について、従来の女性労働者の平均賃金を適用して算定する方法では、性の違いで差別する側面があり、男女平等の理念に照らして適当でないとして、男女を含めた全労働者の平均賃金で算出することで額を引き上げる判決を示しました。

H12-7に奈良地裁葛城支部でも同様の判決があるのですが、全国の見直しには至っておらず、今回の河辺義典判事は交通事故訴訟を専門にあつかう東京地裁民事第27部に所属しており、今回の審理は3人の裁判官の合議で結論を導き出しています。

この判例の影響を受けてと予想されるのですが、男女間格差の解消のため、年少女子の死亡逸失利益の算定においては、基礎収入を男女計の全労働者平均賃金とし、生活費控除率を45%とすることで調整する方式が定着しています。
死亡逸失利益の算定に用いる生活費控除率は、男女差別を意識して、独身・主婦・幼児を含む女性は30%、独身・幼児を含む男性は50%と基準化されているのですが、年少女子で基礎収入に全労働者平均賃金を使うときは、男子を上回ることのないように、45%に調整されています。

しかしながら、後遺障害逸失利益については、男女間格差の問題が残されたままです。

4)新しい判例

H14-5-31、大阪地裁判決
右第4・5足趾喪失、右第1・3足趾の機能障害、右足荷重困難、歩行時の疼痛などで併合8級の認定を受けた小学校2年生の女児に対して、大阪地方裁判所は、逸失利益算定の基礎収入として、平成11年賃金センサス・学歴計全年齢の全労働者平均賃金を使用し、496万7100円、労働能力喪失率45%、喪失期間を49年間と算定し、2374万4029円を認めました。

裁判所は、賃金センサスは、現在就労する労働者の収入に関する限り、現実の労働市場における男女間の賃金格差等の実態を反映したものということができるけれども、就労開始までに相当な期間のある年少者の場合に、これをそのまま当てはめることは、将来の社会状況や労働環境等の変化を無視することになり、交通事故被害者の内、特に年少女子に対し、公平さを欠く結果となりかねない。

なぜなら、今日では、雇用機会均等法の施行労働基準法における女性保護規定の撤廃、あるいは男女共同参画社会基本法の施行など、女性の労働環境を取り巻く法制度がある程度整備され、それに伴って女性の職域、就労形態等が大きく変化しつつあるということができ、現実社会において、男性と同等かそれ以上の能力を発揮し、男性並みの賃金を取得している女性は決して珍しい存在ではなくなってきているからである。

本件について検討すると、原告の症状固定時の賃金センサスにおいて、男子労働者の平均賃金と女子労働者のそれとでは、年収にして217万0400円の開きがあるところ、原告が本件事故当時においては6歳、症状固定時には未だ7歳で、小学校2年生に在籍中であり、就労を開始するものと一応見込まれる18歳の年齢に達するまでには約11年間を要し、前記のような社会状況等の変化を踏まえれば、同女が将来男性並みに働き、男性並みの収入を得られる蓋然性は相当程度認められるというべきであるから、女子平均賃金をもって基礎収入とするのは損害の公平な分担という見地からして相当であるとはいいがたく、むしろ、年少者の職域や就労形態の多様な可能性を考慮すれば、全労働者の平均賃金をもって逸失利益算定の基礎収入とするのが相当というべきであると判示しています。