高次脳5級2号

28歳仮枠大工の運転するバイクが4車線道路の第3車線を走行中、第4車線を走行中の相手自動車の急激な車線変更で接触され転倒したもので、自賠責保険では12級13号が認定されたものの、仮枠大工には復帰できない状態が続いていました。

高次脳が否定されたのは、最初に救急搬送された治療先の脳神経外科医が高次脳機能障害の経験則に乏しく、画像所見で脳挫傷が確認されているものの、意識障害所見は放置されており、その証明が治療先のカルテからできなかったことを理由としています。

弁護士の立証

弁護士の指示で、専門医を受診し、神経心理学的テストでIQの著しい低下、遂行機能障害や記憶障害を具体的に立証し、意識障害所見は、入院後の被害者の状態を家族や恋人から聴き取って補強し、異議申立を行いましたが、自賠責保険は、高次脳を否定しました。

弁護士は、やむなく関係資料を法廷に証拠提出し、専門医に意見書の作成を依頼し、事故後に結婚した奥様と本人の尋問も行いました。

この結果、裁判所は、脳挫傷による高次脳機能障害として5級2号、将来の介護料についても、家族介護で日額2000円を認定しました。
判決で確定した損害額は、なんと、1億0950万円でした。

NPOジコイチのコメント

この被害者には、強烈な思い出があります。
事故当時、恋人だった女性と事故後に結婚したのですが、男の子2人に恵まれました。
無料相談会に参加するたびに、子どもの数が増えており、それを、自慢にしているのです。

「お前は、野生のエルザか?」 大笑いしました。

チーム110の秋葉さんは、高次脳の立証と並行して、交通事故が解決するまでとの条件で生活保護申請のサポートを行い、家族は、生活保護で暮らしていたのですが、その頃に東北大震災が起こり、福島の原発がメルトダウンしたのです。
東海地震で浜岡原発がメルトダウンすると東京は死の町となると吹き込んだ宗教家に影響され、訴訟提起の直前に、家族全員が忽然と東京から消え失せたのです。
弁護士、チーム110の秋葉さんが所在を探し回ったのですが、行方が知れません。

とうとう、弁護士も辞任することになり、放り投げたも同然だったのですが、最後に、念のためにと、私が掛けた携帯電話に、「もしもし、宮尾さん?」 なんと、反応があったのです。
弁護士、110の秋葉さんが毎日のように電話をしていたのですが、一度も出ることはなかったのです。
「あんた、今、どこにいるの?」
「熊本の阿蘇山の麓です。」
「そこで、なにをしているの?」
「お世話になっているおじさんと一緒に農業をしています。」

色々なやりとりがあったのですが、ともかく、奥様のお母さんにお願いして、熊本空港まで迎えに行ってもらって、被害者家族は、なんとか、東京に戻ったのです。
弁護士にも、急いで連絡を入れ、辞任を踏みとどまってもらいました。

高次脳では、被害者に白と黒の思い込みがあって、白と思っている人なら普通に話すのですが、黒では知らん顔、目も合わせないことがあります。
このときは、理由は不明ですが、私が白、弁護士とチーム110の秋葉さんは真っ黒の扱いでした。
弁護士事務所で打ち合わせをしても、被害者は弁護士と目を合わせません。
やんちゃな男の子2人は、机の下に潜って、弁護士の革靴を奪い取って大騒ぎをしています。

現在は、家族揃って、長野県に移住し、地元の農家の支援を受けて無農薬米の栽培をしています。
交通事故無料相談会を甲府で開催したときは、家族揃って、挨拶に来てくれました。
長野の田舎に引っ込んで、子どものアトピーが治ったと、エルザの父親らしく笑っていました。

その後、チーム110の秋葉さんには、新米が送られてくるのですが、白の私には、それがありません。
冗談ですが、いつの間にか、黒になったのかも知れません。

自賠責への異議申立で、高次脳が非該当であったのに、裁判で5級2号が認定されるという珍しい事案でしたが、初め悪くても、終わり良しで、なんと言っても、弁護士の剛腕に頭が下がりました。