1)高次脳7級4号

35歳・会社員男性が、ジョギングをしながら通勤中、信号のない交差点を一時停止側から横断しようとしたところ、右方からの普通貨物車が衝突したもので、高次脳機能障害7級が認定されています。
被害者は事故後、なんとか職場復帰を果たしていたのですが、

損保の反論

①職場復帰を果たし仕事を継続しているので、7級ではなく9級相当が妥当である?
②したがって、労働能力喪失率は、もっと低く見積もるべきである?

「よくも、こんな非道で根拠に乏しい滅茶苦茶な主張がまかり通るものだ!」
これが通常の常識ですが、裁判となると、立証責任は、被害者の弁護士側にあるのです。
損保側には、立証責任がないので、上記のように、言いたい放題がまかり通っているのです。
ですから、被害者側の弁護士選びは、慎重でなければならないのです。

弁護士の立証

弁護士は、被害者とその家族、さらに職場の同僚や上司から詳しく聴き取りを行いました。
①本人は職場復帰したものの、自宅に仕事を持ち帰るなど従来の30~40%増し労働をし、雇用を維持するために相当の努力をしていること、
②それでも、仕事の評価はかなり低下していること、
③職場は、事故の事情をくんで寛大な理解を示してくれていること、

弁護士は、これらの厳しい現実を本人と家族の陳述書によって詳細に立証しています。

⇒裁判所は、それらの主張を全面的に認定し、和解案には、「労働能力喪失率を低く認定することには慎重であるべきであろうと思われる。」つまり、原告の高次脳が就労に影響していることの具体的な文言が明記され、7級での逸失利益が認められ、5000万円の高額な逸失利益を含む、計6800万円の損害賠償額が実現しました。

2)高次脳7級4号

24歳、引っ越し会社の運転手をしている男性が、自動車を運転し、矢印信号にしたがって右折中に、信号無視の対向車の出合い頭衝突を受けたもので、高次脳として7級が認定されていました。

損保の反論

事故後も仕事に復帰しており、労働能力喪失率は7級の56%ではなく、40%程度でよい?

弁護士の立証

弁護士は、就労復帰の状態を調査し、
①被害者は引っ越し会社の運転者であったが、事故後は、同僚の配慮や協力を得ながら、助手として、なんとか仕事を続けているものであること、
②無欠勤など、本人の努力によって、収入は30%程度の減収にとどまっていたこと、
③高次脳の影響から、ドライバーに復職できないこと、

被害者、勤務先の上司、同僚の陳述書をまとめ、上記の3点を主張しました。

⇒この結果、裁判所は、7級に見合う労働能力喪失率56%を認定しました。

NPOジコイチのコメント

自賠責保険の7級4号には、「神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの、つまり、一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの、」と規定しています。
「タバコ屋の店番程度しかできないものが、7級4号です。」

私が保険調査員の頃は、そのように教えられていたのです。

常識的に考えても、労働能力が、一般人の2分の1以下に低下していれば、高次脳を負った多くの被害者は、職場復帰を果たしたとしても、大変な苦労を強いられており、周囲も迷惑しています。

ところが、損保側は、「もっと仕事ができるはずだ?」 と主張し、減額を迫ってくることが多いのです。 キーポイントは、本人の努力と勤務先の理解、そして同僚の援助・協力を陳述書などで、具体的に説明し、現実の過酷さを立証することです。
もちろん、復職している点に付け込んだ損保側の一方的な主張に、屈してはなりません。

被害者側の立証では、本人、家族に加え、職場の上司・同僚の陳述書が必要となります。
手抜きでは、立証に成功しません。