懲罰的慰謝料、初めての画期的な判決?

60歳、農業に従事し、主婦でもある女性が、原付バイクを運転し、交差点手前を車線変更中のところ、これを追い越そうとした軽トラックが衝突し、高次脳で2級1号、視野障害で2級相当、併合1級が認定されました。 被害者は青森県で農業に従事しながら、主婦業もこなし、姑と夫を介護していました。

損保の反論

①青森県の平均賃金は、全国平均に比して20~30%低く、逸失利益もそれに合わせるべき?
②事故の過失は被害者の方に80%と認められること?
③将来介護料は、2級の随時介護であり、家族介護日額5000円もあれば十分?
なんとも理不尽なものでした。

弁護士の立証

弁護士は、事故前の被害者の就労実態を詳しく説明して、逸失利益については、全国平均を採用すべきと主張しました。

⇒これに対して裁判所は、被害者は、家業に主体となって取り組んでいる他、障害を有する夫と姑の介護も一人で担当し、さらに、家事一切を自ら切り盛りしていることが認められるところから、全国平均賃金を採用すべきと判示しました。

都道府県別平均年収
ランキング 都道府県 平均年収 ランキング 都道府県 平均年収
1 東京 580 25 富山 424
2 神奈川 525 26 山口 420
3 愛知 518 27 福井 416
4 大阪 498 28 石川 415
5 滋賀 484 29 福島 407
6 京都 474 30 徳島 405
7 兵庫 474 31 北海道 400
8 静岡 468 32 愛媛 398
9 埼玉 468 33 新潟 397
10 千葉 465 34 熊本 386
11 茨城 461 35 大分 380
12 三重 460 36 鳥取 379
13 栃木 454 37 長崎 378
14 奈良 446 38 島根 377
15 広島 446 39 鹿児島 370
16 福岡 443 40 高知 366
17 群馬 441 41 山形 366
18 岡山 440 42 佐賀 362
19 山梨 436 43 青森 352
20 香川 434 44 岩手 350
21 岐阜 432 45 秋田 348
22 和歌山 430 46 宮崎 347
23 長野 429 47 沖縄 333
24 宮城 429   全国平均 469

被害者の過失割合については、本人の訴えなどから、加害者が主張の事故態様を検証し直し、被害者の進路変更が主たる事故原因ではなく、加害者の強引な追い越しが本件事故を誘発したと主張、

⇒裁判所は、それを認め、被害者過失は5%が相当であると判示しました。

慰謝料は、加害者供述の事故発生状況が虚偽であったことが問題とされ、懲罰的慰謝料の意味で、4000万円が認定、住宅改造費は、バリアフリー化と床暖房設備で700万円が認められました。

介護者は被害者の娘と息子でしたが、2人とも就労しており、弁護士は、職業介護人の必要性を主張し、裁判所は、弁護士の主張を認め、平日の240日は、職業介護日額1万5000円、休・祝日の125日は、家族介護日額6000円、合計で3900万円の将来介護料が認定されました。
損保側の提示額は2600万円、判決では5倍の1億2600万円の損害賠償額が実現しました。

NPOジコイチのコメント

この裁判が進行中に、私は、本件を担当された弁護士と知り合いました。
「宮尾さん、これからは、高次脳の後遺障害慰謝料は、家1軒分だよ!」 凄い鼻息でした。

この弁護士が、高次脳機能障害など重傷事案に特化して行かれたのは、この事件が切っ掛けとなったのではないかと、今でも、感慨深いものがあり、ます。
日本における高次脳機能障害裁判のメルクマールとなる判決です。