2.根拠となる法律・労働安全衛生法と労働契約法

労働安全衛生法

S47に制定された法律で、労働災害を防止し、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を積極的に進めることを目的としています。

労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮) 第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができるよう、必要な配慮をするものとする。

安全配慮義務とは、会社が労働者の生命や健康を危険から保護するよう配慮すべき義務をいい、比較的新しいH20-3から施行された労働契約法5条で、会社の労働契約上の安全配慮義務について明文化しています。

(1)安全配慮義務違反

①会社が、社員が心身の健康を害することを予測できた可能性=予見可能性があって、
②それを、会社として回避する手段があったにもかかわらず=結果回避可能性、手段を講じなかったとき、会社には、安全配慮義務違反が成立することになります。
とは言え、安全配慮義務の内容は一律に、具体的に定められているのではありません。

最高裁第三小法廷判決 S59-4-10

「労働者の職種、労務内容、労務提供場所など、安全配慮義務が問題となる具体的状況などによって異なるべきもの。」と判示しており、個々の事案ごとに、詳細を検証して判断することになります。

(2)検証すべきポイント

工場内や現場事故で、交通事故110番が注意深く検証するのは、以下のポイントです。

1)施設、設備の管理義務としては、

転落防止用ネットや手すりなどの安全装置が設置され、それが機能していたか?
機械などの整備点検が、定期的に、十分に行われていたか?
防犯設備は十分であったのか?

2)人的管理面の義務としては、

安全に対する教育が徹底されていたか?
労働者の危険な行為に対する適切な注意・指導・監督がなされていたか?
個々の労働者の労働時間を正しく把握していたのか?
資格を有する安全監視員を配置していたのか?

労働契約法には、直接的な罰則はありませんが、安全配慮義務違反が認められ、労働審判や裁判になると、会社は、民法=損害賠償請求の矢面に立つことになります。

安全配慮義務違反の責任追及では、時効は10年です。

(3)安全配慮義務 過去の判例、

1)元請企業の下請企業従業員に対する安全配慮義務では、

最高裁第一小法廷判決 H3-4-11
造船所の下請工等として当該造船所の敷地内で、騒音を伴う船舶の建造作業などに従事していた労働者が、会社より耳栓の支給が遅れたこと、必ずしも十分に支給されなかった結果、騒音性難聴に罹患したとして、会社に安全配慮義務違反が認められています。

2)派遣先企業の派遣労働者に対する安全配慮義務では、

東京高裁判決 H21-7-28

会社から派遣され、派遣先の指導監督の下、深夜交代制でクリーンルーム内での半導体製造装置の検査業務に従事していた労働者が、過重な労働などによる肉体的、精神的負担によって罹患したうつ病により自殺した事案で、会社と派遣先会社に安全配慮義務違反が認められました。

3)親会社の子会社労働者に対する安全配慮義務では、

長野地裁判決 S61-6-27
石綿製品の製造作業に従事していた従業員がじん肺に罹患したことについて、事実上、親会社から労務提供の場所、設備、器具類の提供を受け、かつ親会社から直接指導監督を受けて、子会社が組織的、外形的に親会社の一部門のような密接な関係を有していたとして、親会社の安全配慮義務違反を認めています。

直接的な雇用関係がない労働者に対しても、元請け、派遣会社、親会社などに安全配慮義務が求められているのです。

4)安全配慮義務は、労働契約関係にない者との間にも認められることがある。

最高裁第3小法廷判決 S50-2-25
安全配慮義務は、単に労働契約上の義務であるだけでなく、広く、特別の社会的接触関係にある当事者間における義務であると判示しているのです。

申込