5.その他の労働問題-雇用

社会保険、有給休暇、残業、労働条件、偽装請負、内定取消などを取り上げます。

毎日、長時間労働をしているのに、残業代が支払われない?
会社が労災保険給付申請手続きをしてくれない?
仕事中に怪我をして後遺障害が残ったが、補償が十分でない?
業績が悪化したわけでもないのに、会社から突然、不当に賃金を引き下げられた?
勤務先から不当な待遇をうけて、泣き寝入りしている?
あなたの働く権利は、法律で保護されています。
会社の対応に少しでも疑問を感じたら、諦めることなく、NPO交通事故110番にご相談ください。

Q 社会保険がない、かけてくれない?

今や、社会保険完備は常識です。
社会保険とは、健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の4つを言います。
事業所は、あなたを雇用したら、遅滞なく社会保険を適用することが義務となっています。
試用期間だから?
本人の希望を聞いてから手続きする?
アルバイトだから?
そんな次元の問題ではないのです。

アルバイトでは、1週間に20時間未満の勤務のときは、労災保険だけが適用されます。
所定労働時間が1週間に20時間以上あり、なおかつ31日以上働く見込みがあるアルバイトであれば、雇用保険に加入させなくてはなりません。

①健康保険
1週間に30時間以上、就労していれば、加入しなければなりません。
保険料は、本人と事業所で折半です。
医療費の30%は自己負担ですが、病気などで働けないときは、傷病手当金の請求ができます。

②厚生年金
やはり、1週間に30時間以上、就労していれば、加入しなければなりません。
保険料は、本人と事業所で折半です。
退職後の老後の収入となり、障害年金にも対応しています。

③労災保険
強制適用事業であり、1人でも雇用する会社は、必ず加入しなければならない保険です。
業務上、通勤途上の怪我や仕事が原因の病気は、健康保険ではなく、労災保険で治療します。
医療費の本人負担はありません。
休業補償も、平均賃金の80%が治癒するまで保障されます。

④雇用保険
退職したときや失業したときの生活保障で、1週間に20時間以上働く人は、加入義務があります。
事業所負担と本人負担があります。
平均賃金の60%が一定期間保障されます。
失業給付を受けなければ、受給資格は継続されます。

Q うちには有給休暇なんかありません?

有給休暇は、会社が制度として導入するものではなく、労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり、会社の都合で、「うちの会社には有給休暇制度はない?」 そのような法律に反した規則を定めることはできません。
有給休暇は仕事を始めて6カ月が経過した時点で発生します。
有給休暇の日数は、労働時間の長さによって変わってきます。
例えば、フルタイムで働いているときは、6カ月間勤務した時点で10日の有給休暇が発生します。
さらに、有給休暇には有効期限が設けられています。
入社から6カ月を経過した時点で発生した有給休暇は発生から2年を経過すると、就労の開始から2年6カ月後には消滅してしまうのです。
そして初めて有給休暇が発生してから1年ごとに毎年、新たな有給休暇が発生します。

勤続期間 6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月
有給日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

長い年月、1つの会社に勤務しても、1年間に発生する有給休暇の日数は最大20日です。
したがって、1度に確保できる有給休暇の最大日数は40日ということになります。

休暇となった日については、一定の賃金を支払うことが義務付けられており、そこで、この休暇を有給休暇と呼んでいるのです。

6カ月間継続して働いていたら、パートもアルバイトも有給休暇が取れるのです。

なお会社は、日程の変更要請権を有していますが、あなたの有給休暇の取得を拒否できません。
さらに有給休暇の付与に理由をつけることも許されていません。
どのように使うかは、あなたの自由であって、会社として、慶弔以外は認めないなどの制限を加えることはできません。
その意味では、休暇願ではなく、休暇届と考えるのが正しいのです。
休暇届を出して、堂々と休めばいいのです。

Q 残業手当が払われない?

労働基準法第32条では、法定労働時間を1日8時間、週40時間以内と定めています。
そして時間外労働に対しては、会社には、平均賃金の25%増しの残業手当、深夜では50%増を支払う義務が発生します。

法定休日に出勤したときは、25%割増し以上の35%割増しで休日手当を支払わなければなりません。
法定休日とは、労働基準法で定められた週に1回の休日を言います。

現在、大変の上場企業では、土日を休みとする週5日制であり、土曜日を休み、日曜日に休日出勤したときは、法定外休日ですから、通常の時間外労働として扱われます。
その法定外休日の就労が、1週間に40時間を超えているときは、25%の割増賃金、40時間を超えていないときは、通常の賃金が支払われます。

厚生労働省通達では、社員の労働時間管理は、会社の責任で行うこととされています。

なお、8時間労働の例外規定として、変形労働時間制、フレックスタイム制、36協定などがありますが、いずれも労働組合との合意や過半数の労働者代表との合意があることを労働基準監督署に届け出ておかなければなりません。
でなければ、制度そのものが無効になるので、会社が一方的に押し付けることはできません。

一部に、労働時間の管理を行わない会社が根強く残っています。
そのときは、メモやカレンダーなどに出退勤時間の記録を残すようにしてください。
証拠がなければ請求できません。
なお、未払い残業代の請求は、2年で時効消滅します。

Q 上司からサビ残でお願いしますと言われたのですが?

サビ残とは、サービス残業のことです。
サービス残業とは、労働基準法で定めた残業代を支払わないで、社員に残業をさせることです。
社員から未払残業代の請求を受けたときは、会社には2年間分を遡及して支払う義務が生じます。

会社が、サービス残業の実態を知りながら措置を講じなかったときは、労働基準法に違法する行為として労働基準監督署から是正勧告、違法な勤務実態の是正を求める警告を受けます。
この警告を無視して措置を講じなかったときは、労基法違反の疑いで検察庁へ書類送検され、最悪では、労基法違反で会社や代表者が罰せられる可能性もあります。

是正勧告で法違反としてよく指摘される事項は、
①残業代の不払い
②就業規則の未作成
③雇用時における労働条件の書面による明示違反
④法定労働時間、変形労働時間制に関する違反、36協定未作成など
⑤賃金台帳への労働時間の未記入

特に、残業代の不払いは、労働基準監督署としても是正に力を入れています。

クロネコのヤマト運輸では、2016年、横浜支店がドライバーの残業代の一部を支払わなかったとして労働基準監督署から是正勧告を受け、2年分で約57万円を支払っています。
2017-4-19ヤマトホールディングスは、4万7000人の社員を対象に、未払い残業代として190億円を支払うと発表、未払い残業代190億円、これに伴う社会保険料の追加負担として30億円を計上、営業利益は340億円、純利益は190億円となり、ともに前年実績から半減しました。

首都圏が地盤のスーパーいなげやでも、2014-6-5に男性店員が脳梗塞で死亡したのは、長時間労働による過労が原因であったと、さいたま労働基準監督署が過労死の認定をしています。
タイムカードでは、発症前の4カ月平均の時間外労働時間は、75時間53分であり、残業規制の上限である2~6カ月平均で、1カ月がいずれも80時間以上、単月で100時間未満でしたが、弁護士は、警備システムの管理記録からサービス残業を見抜き、過労死認定につなげました。
つまり、タイムカードを打刻する前の早出残業と打刻してからのサービス残業についても時間外労働として認めさせており、この有能な弁護士の立証活動には、頭が下がります。

Q 労働条件をキチンと教えてくれない?

就業規則は、会社のルールブックです。
労働基準法第15条では、会社は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。
具体的には、文書で労働者に示すこととされています。
労働者が要求しても出してくれないときは、労働基準法第120条違反となり、30万円以下の罰金に処せられます。

Q あなたは請負だから労働法は関係ない」といわれた?

事実上の労働者派遣

派遣会社と派遣先の会社で大流行している手口です。
請負契約とは、請負人が仕事の成果を提供することを約束し、発注者が、その仕事の成果に対して報酬を支払う契約のことを言います。
請負会社の社員が、発注先の指揮・命令のもとで、仕事に従事するときは、偽装請負となり、労働者派遣法違反となります。
キャノンが、偽装請負の争いで和解に応じたことが思い出されます。

Q 個人事業主なので、労災保険の適用はできない?

企業等と直接請負契約を結び、個人事業主として業務に従事する形を個人請負と言いますが、労働法の規制を免れるために、労働者を個人請負と詐称して不当に安く働かせる事例も多発しています。
労働基準法9条では、職業の種類を問わず、事業に使用される者で賃金を支払われる者を労働者と言い、事業に使用される者とは、使用者の指揮監督の下に労働を提供する者のことです。
日常、会社に出勤し、会社名の入った名刺を持ち歩いていれば、先の理屈は全く通用しません。

最高裁判決では、
契約書がどうであれ、労働の事態に労働者性があれば、労働者とみなすとしています。

①出社義務があったのか?
②会社の就業規則の適用がなされていたか?
③就労時間について、管理されていたか?
④業務について、具体的な命令、監督はあったのか?
⑤他の会社の仕事との兼業は禁止されていたか?
⑥会社との間で仕事に関し、諾否の自由が認められるのか?
⑦作業場所が決められていても、作業が完了すれば、自由であったのか?
⑧労働者の判断で、補助者を使用することが可能であったか?
⑨他の従業員と比較し報酬が高額か?
⑩賃金なのか、業務請負報酬か?
⑪事業所得として申告をしているか?

労働基準監督署は、労働者性について、上記実態を総合的に勘案して判断することになります。
これで悩んでおられる被害者は、労働基準監督署よりも先に交通事故110番に相談してください。

個人請負では、労働法の対象外ですから、労災保険、雇用保険の対象からも外れます。
仕事で怪我をしても、なんの保証もありません。
賃金が最低賃金を下回っていても罰せられません。
健康保険や年金も国保と国民年金となります。
源泉徴収もされません。
収入については、確定申告をして、税額を確定する必要が出てきます。
会社から個人請負だと言われて、働き方に疑問を感じたときは、NPO交通事故110番に相談です。

Q パートには、なんの権利もないと言われたが?

労働基準法は、日本国憲法第27条に基づいて、最低限の働くルールについて定めた法律です。
労働基準法第9条の労働者の定義は、労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働基準法では、正規も非正規も、パートもアルバイトも派遣などの区別はなされていません。
労働基準法下では、すべてが労働者で、パートであっても、正規の労働者と同じ権利を有しています。したがって、パートだから、派遣だからという理由で労働者を差別することは、あってはなりません。

パートを始めるとき、労働条件を確認し、雇用通知書をもらいましたか?
6カ月以上働いたときは、パートでも、10日の有給休暇が得られます。
残業したとき、残業代は支給されていますか?
辞めたくないのに、突然辞めさせられていませんか?
セクハラに泣き寝入りしていませんか?

Q 有期契約で働いている、正規になりたいが?

2013-4-1から労働契約法第18条が改定されて、5年以上有期で働いている人が「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをしたとき、または当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをしたときであって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」となり、有期契約から正規となる可能性が予想されます。ただし、2013-4以前は対象外です。

厚生労働省は、非正規雇用の労働者を正規雇用化など処遇改善への支援策として、キャリア・アップ助成金、トライアル雇用奨励金の給付で支援しています

とは言っても、会社側には、これ以上正規社員を抱えたくないとして、有期で凌いでいるのです。
明るい兆しは見えていますが、手放しで評価することはできません。

有期労働契約では、契約期間が満了すれば雇用期間も終了します。
ただし、契約期間が満了した後も、会社および労働者がなにも異議を述べなかったときは、民法629条第1項により、前の契約と同じ条件で更新されたものと推定されます。

会社が契約の更新を拒否して雇用期間を終了させるには、期間が満了する前に契約を更新しないことを労働者に伝えなければならず、この通知を雇止めと言います。

Q会社の一方的な都合で内定が取り消されたのですが、したがわなければならないの?

採用内定の取消が適法となるのは、会社が、採用内定とした時点で、知り得ない事実が後に判明し、内定を取消すことが客観的に合理的と認められ、なおかつ、そのことが社会通念上相当であるとして是認できるときに限られるとされています。

会社による一方的な内定取消では、上記の要件を満たしていないもの、つまり、取消の効力がないものが含まれていることが多いのです。
あなたが、内定取消に納得できないときは、NPO交通事故110番に相談してください。

①内定者が、内定後に病気や怪我をしたことによって正常な勤務ができなくなったとき、
②内定後の調査により、内定者が申告していた経歴や学歴の重要部分に虚偽が判明したとき、
③内定者が、大学を卒業できなかったとき、
①~③では、内定が取り消されても、対抗することはできません。

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