ここまでは、高次脳機能障害、遷延性意識障害、脊髄損傷の重症事故を取り上げ、勝負どころとなる弁護士の立証、具体的かつ合理的な解決方法を検証してきました。
部位・系列別の解説は完了しましたが、ここでは、件数は少ないものの、重度な後遺障害を残す可能性の高い傷病名について、追加的に解説しておきます。

(1)上腕神経叢麻痺(じょうわんしんけいそうまひ) 引き抜き損傷

14歳、男子中学生が自転車で通学の途中、信号機の設置されていない生活道路の交差点で、自動車と出合い頭衝突し、3mほど跳ね飛ばされ、右肩から転倒しました。

上腕神経叢麻痺の検討

お互い、スピードも出ておらず、よくある出合い頭衝突のパターンですが、この中学生は、全型の上腕神経叢麻痺により、右上肢のすべての機能を失い、1上肢の用を全廃したものとして5級6号が認定されました。私が経験した初めての上腕神経叢麻痺完全型です。

上腕神経叢麻痺の検討

通勤途上の27歳、男性会社員が、自転車で路側帯を直進中、センターラインオーバーの大型貨物車の衝突を受け転倒、左肺挫傷、左血気胸、左肋骨多発骨折、左尺骨々幹部骨折、左腕上腕神経叢麻痺(左C5~T1の引き抜き損傷)で地元の医大病院に救急搬送されました。

受傷から236日目に肋間神経移行術で入院するも、脂肪肝で延期となり、ほぼ9カ月を経過した275日目に、3、4、5の肋間神経を筋皮神経に移行する手術を受けました。
術後9カ月を経過、筋電図検査で再神経支配が認められるも、筋力の低下により、左肩の自動運動は不能、左肘の屈曲は15°左手関節の自動運動不能、左指は、僅かにピクリと反応する程度で症状固定となり、1上肢の用を廃したものとして5級6号、1手の5の手指の用を廃したもの7級7号で5級相当が認定され、連携の弁護士に引き継いでいます。

※等級認定のルールでは、5級と7級では併合3級となるのですが、1上肢を肘関節以上で失ったもの、4級4号を超える障害ではないので、本件は5級相当が認定されています。

上腕神経叢麻痺の検討

夜勤を終えた29歳女性看護師が、250ccの単車を運転して自宅に戻る途上で幹線国道を東進中、道を間違え、バックで左方向から国道に進入した大型貨物車に跳ね飛ばされ、右鎖骨遠位端骨折、右上腕神経叢麻痺(C5、6の引き抜き損傷)右副神経損傷と診断されています。

受傷から1年9カ月を経過した段階で交通事故無料相談会に参加されました。
受傷から10カ月の時点で肋間神経移行術が実施されていたのですが、右肩の自動運動は、屈曲10°外転10°伸展0°で用を廃した状態でした。
右肘は手術により屈曲130°まで改善しており、右手関節、右手指に機能障害はありません。
ところが、上腕神経叢麻痺で10級10号、右鎖骨の変形で12級5号、併合9級となっています。
神経麻痺であるのに、他動値が計測されており、もっとも他動値もデタラメな計測であったのですが、左右の他動値の比較で判断された様子で10級10号とされていました。

手の専門医を受診し、改めてMRI検査と右肩の計測を依頼し、それらの診断結果と、「本件は、C5、6の引き抜き損傷を原因とする神経麻痺であり、等級認定では、自動運動で判断されるべきである。」 との医師所見を提出し、異議申立を行いました。
結果、右肩は8級6号に訂正され、併合7級が認定され、連携の弁護士に引き継ぎました。

さて、上肢、手の運動は、頚髄から出ている5本の神経根、C5頚髄神経根からT1胸髄神経根を通過して、各々の末梢神経に伝えられており、左鎖骨下動脈部を指で圧迫すると、左上肢が痺れてくるのは鎖骨下動脈の下に、上肢に通過している5本の上腕神経叢が存在しているからです。

上腕神経叢麻痺の検討

神経叢の叢とは、草むらを意味しているのですが、5本の神経根が草むらのように複雑に交差しているところから、上腕神経叢と呼ばれているのです。

上腕神経叢麻痺の検討

上腕神経叢麻痺は、単車・自転車で走行中の事故受傷で、肩から転落した際に側頚部から出ている神経根が引き抜かれるか、引きちぎられる状況で発症しています。
鎖骨骨折、肩関節脱臼、上腕骨骨折などに合併して発症することもあります。

腕神経叢はC5~C8頚髄神経とT1胸髄神経で構成され、それぞれの支配領域は以下の通りです。
①C5頚髄神経根は、肩
②C6頚髄神経根は、肘の屈曲
③C7頚髄神経根は、肘の伸展と手関節
④C8頚髄神経根は、手指の屈曲
⑤T1胸髄神経根は、手指の伸展

これらの神経根は、脊柱管から鎖骨と第1肋骨の間を通り、最終的には、上肢へ行く正中・尺骨・橈骨・筋皮神経となって、上肢全体を支配しています。
本来は、頚・胸髄神経根の引き抜き損傷ですから、自賠責保険では、脊椎・脊髄のカテゴリーの分類としていますが、障害が上肢に集中するところから、ジコイチは、上肢の障害として取り上げています。

(1)症状
C5~T1右神経根5本すべての引き抜き損傷では、1上肢のすべて、つまり、右肩、肘、手関節、手指の機能を失い、神経麻痺により、まったく動かすことができません。

C5右頚髄神経根の引き抜き損傷では、右肘、右手、右手指は動きますが、右肩は麻痺します。
C5/6/7右頚髄神経根の引き抜き損傷では、右肩、肘と手関節は麻痺しますが、右手指は動きます。
神経根だけにとどまらず、神経幹、神経束の損傷が加わると、麻痺形態が複雑になります。

(2)症状固定時期
症状固定は、受傷から6カ月を経過した時点ですが、上腕神経叢麻痺は、どちらの治療先でも対応できる傷病名ではないので、実績のある治療先を2つ、紹介しておきます。

※都立 広尾病院 整形外科
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-34-10
TEL 03-3444-1181
医師 田尻康人副院長、川野健一整形外科部長
専門外来 末梢神経外科外来 木曜日の午後

※JA山口厚生連 小郡第一総合病院 整形外科
〒754-0002山口県山口市小郡下郷862-3
TEL 083-972-0333
医師 土肥 一輝 統括院長

(3)治療 専門病院の受診
急性期を脱した受傷後2カ月で行動すること
受傷から2カ月を経過した時点で、治療先で紹介状を取りつけ、実績のある専門病院を受診します。
腕神経叢麻痺が自然回復するか、手術で神経を移行する、移植することができるかの判断は、

①神経が脊髄で引き抜かれているか?
②断裂では、神経損傷のレベル?
③麻痺の型? で決まります。

脊髄から引き抜かれているかの判定は、脊髄造影、CTミエロ、MRI、電気生理学診断の補助診断が必要となるのですが、脊髄造影で引き抜き損傷に特有の偽性髄膜瘤、つまり造影剤の漏出所見があれば、いくら待っても自然回復はなく、早期に手術で腕神経叢を開き、副神経や肋間神経の神経移行術をする必要があります。

神経断裂では、神経縫合術が選択肢となりますが、損傷された神経の欠損が多いときは、神経移植術の適用となります。

C5~T1の引き抜き損傷による全型麻痺では、従来、肋間神経を移行して肘屈曲を再建し、肩固定術を2次的に行う方法が中心でしたが、手指が動くことはなく、機能回復としては不満足なものでした。
小郡第一総合病院が開発した①~③の3回の手術によるDFMT法では、肩と肘機能だけでなく、手指屈伸機能も回復できるようになり、最も優れた機能回復手術として評価されています。

①最初の神経移植術か、神経移行術による肩機能の再建、
②次ぎに、筋肉移植による肘屈曲と手指伸展の再建、
③最後に、筋肉移植術による指屈曲の再建と同時に行う肘伸展と手指の知覚再建からなっています。

夢の手術ですが、すべてで適用できるのではありません。
副神経や肋間神経の移行や移植手術は、腕神経損傷後6カ月以内でないと適応がありません。
6カ月以降に手術を行っても、筋肉が萎縮し、神経が回復しても充分な筋力が回復できないからです。

DFMT法、筋腱移行術であっても、原則として40歳未満の年齢制限があります。
年齢は若いほど、神経回復は良好ですが、40歳、50歳となると神経回復が不良になるからです。
さらに、鎖骨下動脈損傷や副神経損傷を合併しているときは、DFMT法は実施できません。

1)専門医の受診
繰り返しますが、どちらの治療先でも対応できる傷病名ではないので、受傷から2カ月を経過し、急性期を脱した時点で、治療先からの紹介状を取りつけ、専門医を受診しなければなりません。

専門医の診察、検査により、神経の移行や移植術が診断されたときは、受傷6カ月以内で手術を決断することになります。モタモタして行動を先延ばしにしていると、手術による改善は不可能となります。
治療先の対応に不安を感じたときは、NPOジコイチ0120-716-110に相談してください。
現在状況を確認して、専門医につなぎます。

2)後遺障害の立証
①引き抜き損傷では?
後遺障害の立証ですが、脊髄から神経根が引き抜かれる損傷が最も重篤で、手術により引き抜かれた神経を縫合することは不可能であり、予後は不良です。
引き抜き損傷では、脊髄液検査で血性を示し、CTミエログラフィー検査で、造影剤の漏出が確認できるので、後遺障害の立証は、比較的には簡単です。

引き抜き損傷では、眼瞼下垂、縮瞳および眼球陥没のホルネル症候群を伴う可能性が大となり、手指の異常発汗も認められています。

眼球陥没のホルネル症候群
ホルネル症候群

②神経断裂では?

神経根からの引き抜きはないものの、その先で断裂、引きちぎられるものがあります。
断裂では、ミエログラフィー検査で異常が認められず、ホルネル症候群も、異常発汗を示さないこともあり、このレベルでは、脊髄造影、神経根造影、自律神経機能検査、針筋電図検査等の電気生理学的検査、MRI検査などで、麻痺を立証しています。

3)軸索損傷?
似て非なるものに軸索損傷があります。
神経外周の連続性は温存されているのに、軸索と呼ぶ神経内の電線が損傷されているもので、このレベルであれば、3カ月位で麻痺が自然回復するので、後遺障害の対象ではありません。

4)神経虚脱?
やはり、似て非なるものですが、神経外周も軸索も切れていないのに、神経自体がショックに陥り、麻痺していることがあり、これは神経虚脱と呼ばれていますが、3週間以内に麻痺は回復するので、後遺障害の対象ではありません。

5)頚椎捻挫なのに、腕神経叢麻痺?
手の痺れや、握力の低下が認められる、頚椎捻挫の被害者の診断書に、人騒がせにも、腕神経叢麻痺の傷病名が記載されていることがありますが、治療内容は理学療法、ビタミン剤の内服が中心で、一般的な頚椎捻挫と何ら変わりません。
そして、通常の頚椎捻挫で、腕神経叢麻痺が起こることはあり得ませんから、気にしないことです。

6)後遺障害等級

等級 喪失率 内容
5級6号 79% 1上肢の用を廃したもの、
6級6号 67% 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの、
7級7号 56% 1手の5の手指または親指を含み4の手指の用を廃したもの、
8級6号 45% 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの、

①C5~T1の引き抜き損傷で、神経移行術や筋腱移行術、筋肉移植術などが実施されず、6カ月以上を経過したものは、1上肢の用廃と1手指の用廃で、ほぼ確実に5級相当が予想されます。

②C6~T1の引き抜き損傷では、1上肢の2関節の用廃で6級6号、手指の用廃で7級7号となり、併合のルールでは、併合4級となりますが、1上肢を手関節以上で失ったものにはおよばず、併合6級の後遺障害を残す可能性が予想されます。

③C7~T1の引き抜き損傷では、手関節の機能障害で10級10号、5の手指の用廃で7級7号、併合のルールでは5級になりますが、1上肢の2関節の用廃にはおよばず、併合7級の後遺障害を残す可能性が予想されます。

④C8~T1の引き抜き損傷では、5の手指の用廃で7級7号となる可能性が予想されます。

上腕神経叢は、5本の神経根が草むらのように複雑に交差しており、引き抜き損傷か、神経の断裂か、また副神経損傷を伴っているか、神経移行術や筋腱移行術、筋肉移植術などの成果などで、残している障害はマチマチであり、①~④で説明している理論上の推定が当てはまらないことも頻繁です。
実際に、被害者と面談し、残しておられる障害から等級の立証を開始しています。

上腕神経叢麻痺における後遺障害のキモ?

1)ともかく、受傷2カ月で専門医を受診、上記の手術の可否判断、改善の可能性について、年齢に関係なく、被害者自身で確認され、判断することをお勧めしています。

2)手術の適応とならないときは、受傷から6カ月で症状固定とし、後遺障害診断を受けます。
神経移行術が実施されたときは、平均すれば、手術から4カ月を経過した時点で症状固定とし、後遺障害診断を受けています。

3)DFMT法が実施されたときは、術後およそ8カ月を経過した時点で症状固定とし、後遺障害診断を受けています。事故後6カ月で手術を受けたとして、症状固定までには事故後1年2カ月を要します。

4)自賠法のルールでは、正常値の10%以上に可動域が改善したときは、用を廃したものではなく、機能障害ととらえられ、健側の2分の1以下であれば10級10号で喪失率27%、4分の3以下であれば、12級6号で喪失率14%が認定されています。

例えば、右肩関節の屈曲や外転が25°であるときは、10級10号となりますが、高いところにあるモノをとる、高いところにモノを上げることはまったくできません。
つまり、肩関節の役目を果たしていないのですが、自賠法では10級10号、喪失率27%で、用廃の8級6号、喪失率45%に比較すれば、相当に見劣りするのです。
しかし、自賠法の規定ですから、被害者個人が声を上げても、取り上げられることはありません。
法改正が必要となるからです。

5)したがって、本件の傷病であれば、弁護士に一任し、訴訟で決着することが一般的です。
であれば、自賠責保険の認定等級に縛られることなく、事故前の仕事の内容と、実際の上肢の機能の実用性を検証して、きめ細かく等級、喪失率、喪失年数を議論して損害賠償につなげていくことができるからです。

(2)重度骨盤骨折

骨盤骨折で済んでよかったね?
これが大方の印象ですが、下肢の骨折で死亡例が最も多いのは、実は骨盤骨折なのです。
ここでは、内臓損傷を伴う重度骨盤骨折について、解説していきます。

39歳女性看護師が通勤のため軽自動車を運転してトンネル内を走行中、対向車線で追突事故が発生し、追突を受けたワゴン車がセンターライを超えて郵便集配車と接触、その後、軽自動車、クレーン車に激突する5台の関係する多重事故となり、ワゴン車の助手席に同乗中の女性は死亡しています。

軽自動車を運転中の女性は、右横隔膜破裂、小腸穿孔、肝損傷、右肺挫傷、右肋骨多発骨折、右上腕骨々幹部骨折、右肘頭開放骨折、右尺骨々幹部骨折、右股関節脱臼骨折(右臼蓋骨折と右大腿骨頭骨折を含む)、左骨盤複垂直骨折、左恥骨・坐骨々折、左大腿骨々幹部開放性骨折、左膝顆部・顆上骨折、卵巣機能不全、左顔面裂傷の傷病名で入院しています。
これまでに相談を受けた被害者の中では、最大の傷病名数記録であり、現在も破られていません。

右横隔膜破裂と小腸穿孔は、緊急開腹術で縫合され、右肺挫傷はドレーンが挿入されました。
左骨盤複垂直骨折、左恥骨・坐骨々折は、当初、創外固定で骨盤の安定化が優先されました。
左大腿骨々幹部開放性骨折と右肘頭開放性骨折は感染予防の必要から、事故当日に、デブリードマンと観血的骨接合術、顔面裂傷に対しては縫合術が実施されました。

8日を経過した段階で、右上腕骨々幹部骨折、右尺骨々幹部骨折について、観血的骨接合術が実施され、さらに12日を経過して、骨盤骨の安定化が得られたので、右股関節脱臼骨折(右臼蓋骨折と右大腿骨頭骨折を含む)、左骨盤複垂直骨折、左恥骨・坐骨々折について、観血的整復固定術が実施され、左膝顆部・顆上骨折は、腸骨からの骨移植を含む観血的骨接合術が実施されました。
いずれも複数箇所の大手術となりました。

受傷から1年を経過した段階で症状固定を選択しました。
骨盤骨の変形は3DCTで立証し、12級5号、骨盤骨の変形に伴う右下肢の短縮が1cmで13級8号でしたが、変形と短縮の競合では、いずれか上位の等級となるので、本件は12級5号となります。
右股関節の機能障害で12級11号、
左膝顆部・顆上骨折は、膝関節の変形性をXP、MRI、3DCTで立証し、10級11号
顔面の醜状痕は9級16号、
両下腿の醜状瘢痕は、被害者の手の平の3倍以上で12級相当、

卵巣機能不全による無月経は、MRI画像などにより卵巣の器質的損傷を立証することができず、原因不明の状態でしたが、受傷から1カ月以内に入院先の婦人科を受診し、卵巣機能不全と診断されていること、その後、内服治療を継続するも無月経状態が続いており、ホルモンバランスの乱れを原因としたイライラ、疲労感、のぼせ、動悸、頭痛、めまいなどの自律神経症状を訴えていたことから、本件事故との因果関係を認め11級10号となりました。
等級は併合され、併合7級が認定されました。

右上腕骨々幹部骨折、右尺骨々幹部骨折について、左大腿骨々幹部開放性骨折では、機能障害を残していません。

彼女には16の傷病名が診断されており、死亡であっても不思議でない重篤でしたが、幸いに、動脈損傷や内臓損傷がなく、骨盤骨では、変形による12級5号の認定でした。
しかし、骨盤骨の変形は、生涯、治癒することはありません。
右股関節脱臼骨折後、右下肢の短縮1cmもあり、これからは、変形性股関節症との戦いが続きます。
10級11号が認定された左膝顆部・顆上骨折ですが、2年も経過すれば、12級7号レベルの機能障害に改善すると予想していますが、膝関節軟骨の大半を失っており、この部位も変形性膝関節症との戦いが続きます。肥満や運動不足は命取りであり、かといって過度な運動も避けなければなりません。

※卵巣機能不全
卵巣からは、月経周期にかかわる2種類の女性ホルモン、エストロゲンとプロゲステロンが分泌され、それぞれが子宮に働きかけることで毎月の月経周期を調整しています。

卵巣機能不全とは、卵巣の機能が低下し、2つの女性ホルモンのバランスが崩れることで、月経周期の乱れや排卵障害が引き起こされている状態です。
外傷性は少なく、一般的には、精神的ストレス、過剰なダイエットや激しい運動などが原因として指摘されています。卵巣に女性ホルモンの分泌を指令する視床下部は、自律神経もコントロールもしており、ストレスなどで自立神経が乱れると脳から卵巣への指令がうまく出せなくなり、女性ホルモンのバランスが崩れやすくなります。

卵巣機能不全では、
①月経の出血が1週間以上続く過長月経、
②月経周期が39日以上90日未満という長期間に渡る稀発月経などがあり、
これらが悪化すると、90日以上月経が来ない無月経や、生理がきても排卵されない無排卵月経となり、この状態が長期化すると子宮内膜の成長が止まり、萎縮することで、女性ホルモンがうまく分泌されなくなり、不妊につながります。
さらに、ホルモンバランスが崩れることで、イライラ、疲労感、のぼせ、動悸、頭痛、めまいなどの自律神経失調の症状が出現します。
治療では、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが体内で不足していないかどうかを調べ、必要なときは、デュファストンなどの薬を内服するホルモン療法が行われています。

外傷性では、頭部外傷により視床下部や下垂体に損傷を受けたとき、骨盤骨折により卵巣が損傷したときなどが予想されますが、多発している障害ではありません。

34歳男性会社員が、休日に自動二輪車でツーリング中、対向右折の貨物トラックに跳ね飛ばされ、交差点の信号柱に激突しました。

傷病名は、内腸骨動脈損傷、仙骨左側部縦方向の骨折、仙髄神経損傷、左恥骨結合部骨折、左肩甲骨々折で、救急搬送後、内腸骨動脈損傷による大量出血に対しては、開腹術により、金属製のスポンゼコイルを動脈内に挿入する塞栓術が実施されました。
仙骨は、左仙骨孔に沿って縦方向に骨折しており、さらなる仙髄神経麻痺が予想されるところから、プレート固定を断念、保存的療法が選択されました。
入院下でベルトによる介達牽引が実施され、骨盤骨折が安定した状況で、左恥骨結合部骨折は、破断部をプレート固定しています。

さて、この被害者の訴えは、ED障害と排尿障害、左下肢麻痺による歩行障害と左肩関節の運動障害であり、入院中に泌尿器科を受診、治療を続けていました。

受傷から1年4カ月を経過した段階で症状固定を選択しました。
①仙骨左側部縦方向の骨折は骨癒合が得られておらず、偽関節の状態でしたが、これは3DCTで立証、骨盤骨の変形で12級5号が認定されました。

②仙髄神経損傷を原因とするED障害は、泌尿器科で、リジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査、プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査などで立証、排尿障害についても泌尿器科におけるウロダイナミクス検査で低コンプライアンス膀胱、失禁、排尿筋の協調不全を立証しました。
ED障害と排尿障害は総合的にとらえられ、胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないものとして7級5号が認定されました。

③左下肢の知覚低下、左下肢麻痺、歩行障害については、針筋電図検査で仙髄神経損傷を立証、神経症状として12級13号が認定されました。

④左肩甲骨骨折後の左肩の機能障害は、健側の4分の3を超えており、運動時痛で14級9号が認定されました。以上の等級は併合され、併合6級となり、損害賠償は連携の弁護士に引き継ぎました。

※仙髄神経損傷

仙骨部

少数例ですが、交通事故で仙骨の骨折に伴い、仙髄神経を損傷することがあります。
仙髄の損傷で出現する代表的な症状は、
①S1~S2の損傷では、足の痺れや筋力低下などです。
仙髄損傷では、感覚は残していますが、スタスタ歩けるほどの筋力はなく、痺れもあって、動かすことが困難となります。リハビリを通して、徐々に足の機能を回復させて行くことになります。

②S3~S5は、排尿調節、排便調節そして性機能に関与しており、この部位の損傷では、膀胱や腸の機能消失により、頻尿や排尿困難の排尿障害、肛門括約筋の麻痺による排便障害、勃起不全などの障害を残すことが予想されます。

仙骨骨折における後遺障害のキモ?

1)骨盤骨折の中でも、仙骨々折では、仙髄神経損傷を合併する頻度が高いのです。
仙骨神経、S1~S4は、梨状筋の前で仙骨神経叢となり、下肢の運動機能を、S2~S4では、排尿調節、排便調節そして性機能を支配しており、さらに、自律神経系からの介入もあって、これらの機能に重要な役割を果たしています。

2)S1/2の損傷では、足関節を自動運動で背屈することができなくなります。
足背は強烈に痺れ、筋力は低下、下肢に筋萎縮が認められます。
針筋電図検査で仙髄神経麻痺を立証すれば、10級11号が認定されます。

3)S3/4/5の損傷では、排尿・排便・性機能に障害を残します。
排尿障害は、泌尿器科でウロダイナミクス検査を受けて立証します。
排便障害も、泌尿器科における肛門内圧検査で立証します。
性機能障害は、男女別、その内容により立証が異なります。
いずれも、針筋電図検査で仙髄神経麻痺を立証することが、等級認定の前提となります。

(1)骨盤の仕組みと重要性

骨盤を斜め上から見ると、骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨で構成され、後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で融合して骨盤輪を形成しており、体幹の姿勢を支え、身体の要となっているのですが、問題となるのは、骨盤輪の中には、S状結腸、直腸、肛門、膀胱、尿道、女性では、これらに加えて、子宮、卵巣、卵管、腟が収納されていることです。
消化管は下腸間膜動脈、女性性器は卵巣動脈と子宮動脈、泌尿器系は内腸骨動脈により必要としている酸素と栄養素を供給されています。

したがって、骨盤骨折における後遺障害は、以下の3つとなります。
①骨盤骨折自体に関するもので、疼痛や股関節の運動障害、骨盤の歪みを原因とする下肢の短縮
②骨盤輪内に収納されている臓器の損傷、
③内腸骨動脈などの血管の損傷、

ほとんどは、交通事故、転落あるいは墜落による衝撃を原因とした骨折です。
前方からの外力では、恥骨骨折、坐骨骨折、恥骨離開=左右の恥骨が開くこと、
下方からの外力では、恥骨骨折、坐骨骨折、同側の仙腸関節離開、寛骨臼骨折、
そして外側からの外力では、寛骨臼骨折、腸骨骨折を生じます。

坐骨骨折では、半腱・半膜様筋・大腿二頭筋の引っ張りで、骨折部は下方へ転位し、股関節の伸展運動ができなくなります。
片側の恥骨や坐骨の骨折であれば、ほとんどで安定型骨折であり、入院は必要ですが、手術に至ることはなく、安静下で、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDが投与されます。

(2)骨盤骨折の重症例

1)ストラドル骨折、マルゲーニュ骨折
骨盤は、骨盤輪と呼ばれる内側でぐるりと輪を形成しており、骨盤輪が、一筆書きに連続しているので、骨盤は安定しているのですが、両側の恥骨と坐骨の骨折で、骨盤輪の連続性が損なわれているストラドル骨折や骨盤複垂直骨折であるマルゲーニュ骨折では、身体の要である骨盤は、安定性を失い、大きくぐらつくことになります。

骨盤複垂直骨折は、この骨盤輪を形成している骨盤が2カ所骨折したもので、2カ所の骨折により骨盤の安定性が損なわれ、転位の認められるものは、創外固定器で整復固定術が実施されています。

若い女性で、骨盤に多発骨折をきたしたときは、婦人科的に精査しておく必要があります。
骨盤の変形により、正常分娩が不可能で、帝王切開が余儀なくされることが十分に予想されます。
これは11級10号に該当し、複数回を獲得しています。
当然に、出産が可能な年数について逸失利益が認められます。

2)恥骨結合離開・仙腸関節脱臼
骨盤は左右2つの寛骨が、後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して、前側で恥骨結合を介してジョイントしており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しているのです。
この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な組織となっているのですが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をすることになります。

イラストのような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。
上のイラストでは、右大腿骨頭の脱臼も伴っており、観血的に整復固定が必要となります。

大腿骨頭の納まる部分の寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性が予想されます。
本件の場合、股関節は10級11号が、骨盤は12級5号が認められ、併合で9級が認定されます。

3)内腸骨動脈損傷 ないちょうこつどうみゃくそんしょう)

骨盤骨折の死因の50%は、出血多量であると報告されており、骨盤腔内の出血で出血性ショックを引き起こし死亡することも、決して珍しくはありません。
輸液・輸血にもかかわらず、血圧が上昇しないときは、ただちに内腸骨動脈造影を実施し、スポンゼルコイルを使用して両側内腸骨動脈の根元から血管塞栓術を実施します。

骨盤内臓器の副損傷を伴うケース、恥骨骨折と尿道損傷などでも同上の処置が取られます。
余談ですが、血管塞栓術の合併症として男性ではインポテンツの可能性が指摘されており、大変厄介ですが、女性には合併症はありません。
驚かれたことと思いますが、骨盤骨折は重傷なのです。

4)骨盤骨折に伴う出血性ショック

出血量 ~15% 15~30% 30~40% 40%以上
脈拍数(回/分) 100以下 100以上 120以上 140以上
血圧(収縮期) 正常 正常 低下 低下
呼吸数(回/分) 14~20 20~30 30~40 35以上
精神神経症状 軽い不安感 中程度の不安感 強い不安感・混乱 混乱・昏睡

出血性ショックとは、大量の出血により、主要な臓器に必要な血流が維持できず、細胞機能が保てなくなったときの症候群であり、一般的には血圧が低下しますが、実は血圧が低下する以前に、上記の症状を示しています。
血圧が下がり始める前に、出血性ショックの有無を判断、迅速な処置、病院への搬送を行わなければなりません。つまり、血圧の測定以外に、出血性ショックの症状が出現する顔色、呼吸、脈拍、皮膚を慎重に観察しなければなりません。初期症状としては頻脈=脈拍数の増加と、皮膚症状=皮膚が冷たく、青白く、冷や汗が出るのが代表的で、このような症状があれば、血圧が低下していないときでも、出血性ショックの可能性が予想されます。

骨盤骨折の検査と診断では、触診により骨盤の損傷が疑われる部位に圧痛や動揺性がないかを検査し、これらの所見が見られるときは、骨盤部XP撮影で診断されています。
また、仙骨骨折、仙腸関節の離開はCTにより鮮明な骨折画像が得られ、内腸骨動脈損傷による後腹膜出血の程度の診断も可能です。

血尿では、尿道造影と膀胱造影を、肛門出血では、注腸造影で確定診断とします。
治療は、以下の優先順位で勧められます。

①内腸骨動脈損傷による出血性ショックのあるときは、ただちに血管撮影室において塞栓術で止血されます。コイル等で出血している動脈を詰めるのが、一般的な塞栓術です。
②膀胱・大腸損傷などの合併症に対しては、緊急手術の適用となります。
③不安定な骨盤骨折に対しては、一次的には、局所麻酔下で創外固定が実施されています。

5)骨盤骨の歪みによる脚長差?

骨盤骨の歪みにより、左右の下肢に脚長差が生じたときは、ONISのソフトを駆使して、脚長差を具体的に立証します。
①1cm以上であれば13級8号、
②3cm以上であれば10級8号、
③5cm以上であれば8級5号が認定されるのですが、骨盤骨の変形で12級5号と比較して、いずれか上位の等級が認定されており、このことも、承知しておかなければなりません。

6)内臓損傷の合併と立証方法?

①尿管、膀胱および尿道の障害
骨盤骨折に伴う膀胱破裂で、縫合修復困難で全摘、尿路変向術を受けた1例を経験しています。

尿路変向術を行ったもの
5級3号 非尿禁制型尿路変向術を行ったが、尿が漏出しストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの
7級5号 非尿禁制型尿路変向術を行ったもの 禁制型尿リザボアの手術を行ったもの
9級11号 尿禁制型尿路変向術を行ったもの、(禁制型尿リザボアおよび外尿道口形成術を除きます。
11級10号 外尿道口形成術を行ったもの

腎臓で生成された尿は腎盂から尿管を経て膀胱に畜尿され、尿道を通じて体外に排尿されます。
この経路を尿路といいます。
健常な膀胱の機能は、尿を失禁することなく安定して貯める畜尿機能と、尿意に基づいて自分の意思で残尿なく排出する排尿機能、この2つの機能が両立しなければなりません。

非尿禁制型尿路変更とは、排泄口、ストマから絶えず流れ出る尿を袋、パウチで集尿する手術法で、禁制型尿リザボアは、腸管を使用して体内に畜尿可能なパウチを作成、失禁防止弁を有する脚を介して腹壁にストマを形成します。 畜尿機能はあるも排尿機能はなく、ストマから自己道尿を必要とします。しかし、ストマは小さくパウチの装着は不要です。
これら以外の尿禁制型尿路変更術とは、S状結腸に尿管を吻合し直腸に尿を畜尿します。
肛門括約筋により尿禁制が保たれ、人工排泄口、ストマは必要なく、自分の意思で排尿、排便のコントロールが可能となります。

②排尿障害を残すもの

排尿障害を残すもの
9級11号 残尿が100ml以上のもの、
11級10号 残尿が50~100ml未満であるもの、 尿道狭窄のため、糸状プジーを必要とするもの、
14級相当 尿道狭窄のため、糸状プジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術を行う必要のあるもの、
頻尿を残すもの
11級10号 頻尿を残すもの、
尿失禁を残すもの
7級5号 持続性尿失禁を残すもの 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換するもの
9級11号 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着しているが、パッドの交換を要しないもの
11級10号 切迫性尿失禁または腹圧性尿失禁のため、パッドの装着は要しないが下着が少し濡れるもの

膀胱の蓄尿量は200~300mlあり、150mlで軽い尿意、250mlで強い尿意が起こります。
排尿は、1日1500ml、昼間の覚醒時で4、5回、夜間の就寝時で2回、合計7回の排尿が成人の平均と言われています。昼間の覚醒時で8回以上、夜間の就寝時で3回以上の排尿を頻尿と言います。

くしゃみ等の生理的な反射や階段の昇り降りなどの動作をきっかけに、お腹に力が加わったときに起きる尿失禁を腹圧性尿失禁、前触れもなく尿がしたくなり、その高まりが急なためトイレまで間に合わなくて失禁してしまうのは、切迫性尿失禁といいます。

検査と立証は、泌尿器科におけるウロダイナミクス検査で立証しなければなりません。
ウロダイナミクス検査とは、排尿時の膀胱、膀胱内圧・排尿筋圧測定と尿道、尿道括約筋筋電図の働きを同時に記録することにより、排尿障害の病型を診断する検査です。
従来の膀胱内圧検査を含み、様々な病態を計測することが可能となっています。
蓄尿から排尿終了までの間の膀胱内圧、腹圧(直腸内圧で測定)、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流などを測定し、排尿障害の部位や程度を総合的に診断します。

基本となる①~③の3つの測定に加え、症状によってさらに特殊な④~⑦の4つの測定を行うことがあります。実施する測定項目は専門医の診断により選択されており、排尿障害の立証には、専門医とウロダイナミクス検査の設備のコンビネーションを備えた病院の確保がなにより重要です。

超音波画像検査
排尿後の残尿量を調べます。
ウロダイナミクス検査
①尿流量の測定 尿が出始めてから終わるまでの量の変化をグラフで表します。
②膀胱内圧検査 直径5mmの管を尿道から膀胱に挿入、水または生理食塩水を注ぎ込みます。 尿のたまり始めから排尿に至るまでの膀胱の内圧の変化を測定、収縮のパターンをチェック 切迫性尿失禁の無抑制収縮の膀胱の判定が出来ます。
③尿道内圧検査 尿道の内圧を調べることで、腹圧性尿失禁を判定します。
④リークポイント・プレッシャー 膀胱に水を満たし、腹圧をかけて、尿が漏れる瞬間の尿道や括約筋の状態をチェックする検査です。
⑤尿道括約筋・筋電図 尿がたまり始めてから排尿に至るまでの尿道括約筋のパターンを、筋電図にとって調べます。
尿道括約筋の収縮不全が原因の腹圧性尿失禁を判定します。
⑥プレッシャーフロー・スタディ 尿流測定と膀胱内圧測定を同時に行い、排尿障害の原因を探ります。
⑦内圧尿流検査 排尿時の下部尿路機能評価を目的に、排尿筋圧(膀胱内圧-腹圧)と尿流率の2つのパラメータを同時に測定します。

※検査の必要性について
排尿・排便障害は腰椎圧迫骨折や仙骨骨折で発症することが多く、このときは、脊髄の腰~臀部の馬尾神経が病原部位となります。
この神経に圧迫、損傷があると下肢のしびれ、歩行障害と並び排尿・排便に異常が起きます。
稀にではありますが、頚髄損傷でも発症します。

腰椎捻挫、むち打ちを原因として排尿・排便障害に悩まされる被害者さんを多く経験しています。
「おしっこが出辛くなった、回数が異常に増えた?」
これについては、膀胱内圧検査が有名で、よく知られています。
しかし多くの泌尿器科では、あまり積極的にこの検査を行いません。
「おしっこが出ないから、ここに来たのでしょう、今更出ないことを検査してどうするの?」
医師の間では、このような受け取り方が一般的なのです。
しかし、医師は、患者の症状、「おしっこがでない?」 ことについて疑いを持ちませんが、損保、調査事務所、そして裁判所は証拠を出さない限り、信用してくれないのです。
したがって、検査による立証は絶対に必要なのです。

さらに、検査の必要性はそれだけではありません。
昨年お会いした泌尿器科の専門医の考えは違っています。
排尿障害といっても内圧の不調によるもの、括約筋の不全を原因とするもの、つまり、原因は1つではなく、それに見合った治療が必要であると指摘されています。

眼球陥没のホルネル症候群
男性用導尿カテーテル

例えばカテーテルを使用している閉尿の患者に対し、おなかを押して排尿を促すような指導が実際に行われています。ところが、閉尿の原因が括約筋不全であるなら逆効果で、さらに増悪する危険性があるとのことです。数十年前の知識で治療をしている泌尿器科医も多く、間違った治療と相まって検査の重要性の認識が希薄なのです。

現在、膀胱の内圧を計測するだけではなく、いくつかの検査を総合したウロダイナミクス検査が最先端ですが、町の泌尿器科の多くは設備がなく、大学病院クラスの検査先の確保が必要です。

③生殖器の障害

生殖器の障害
7級5号 男性では、両側の睾丸を失ったもの
男性では、常態として精液中に精子が存在しないもの
女性では、両側の卵巣を失ったもの
女性では、常態として卵子が形成されないもの
9級11号 男性では、陰茎の大部分を欠損したもので、陰茎を膣に挿入できないもの
男性では、勃起障害を残すもの
男性では、射精障害を残すもの
女性では、膣口狭窄を残すもので、陰茎を膣に挿入できないもの
女性では、両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの、画像でチェック
女性では、子宮頚管に閉鎖を残すもの、画像でチェック
女性では、子宮を失ったもの、画像でチェック
11級10号 女性では、狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの
13級11号 男性では、1側の睾丸を失ったもの
男性では、1側の睾丸の亡失に準ずべき程度に萎縮したもの
女性では、1側の卵巣を失ったもの

※勃起障害を残すものでは、以下のいずれにも該当しなければなりません。
ⅰ)夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査により証明されていること

ⅱ)支配神経の損傷等勃起障害の原因となる所見が、以下の検査のいずれかにより認められること
会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査
プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査

※会陰部の知覚
会陰部とは、俗に蟻の門渡りと呼ばれる外陰部と肛門の間に位置していますが、肛門の周囲を針で刺して痛みがあれば正常とされています。

※肛門括約筋の随意萎縮
肛門に指を挿入、肛門収縮があれば正常とされています。

※球海綿体筋反射
肛門に指を挿入し、亀頭や陰核をつかみます。
肛門が収縮すれば正常、亢進すれば脳・脊髄に、消失すれば末梢神経の障害が予想されます。

④後遺障害等級 併合と相当

※併合
Q 交通事故により肋骨の著しい変形となりました。
それを原因として呼吸機能に障害を残したのですが、なん級が認定されますか?

肋骨の著しい変形は12級5号、
呼吸機能の障害は11級10号となります。
最終的には、等級は上位等級が採用され、11級10号となります。

胸腹部臓器の障害と系列を異にする障害が、通常派生する関係にあるときは、併合することなく、いずれか上位の等級が認定されています。

※相当
Q 交通事故で心機能の低下による軽度の運動耐容能の低下で11級10号、
ペースメーカーの植え込みで9級11号、
食道狭窄による通過障害で9級11号が認定される見込みです。
私の最終等級をお教えください。

生殖器を含む胸腹部臓器に障害が2つ以上あるときは併合の方法により相当級が決められます。
上記の質問では、8級相当が認定されます。

Q 両側の睾丸を失い、7級13号、
さらに、器質的な原因で勃起障害、9級16号を残しました。
認定される等級をお教えください。

生殖器の障害のみを残す者で、生殖機能を完全に喪失したものに該当するときは、その他の生殖機能の障害に該当するときでも、7級相当で止まります。
本件では7級相当となります