23歳女性会社員が、乗用車の後部座席に同乗中、センターラインオーバーの対向車の衝突を受け、自車が電柱に激突し、C6/7頚椎骨折により中心性頚髄損傷で3級3号が認定されています。

損保の反論

リハビリ医のカルテの内容、隠し撮りのビデオ撮影から、実際には9級相当の軽度障害であり、介護料や家屋改造費は認められない?

弁護士の立証

①相談の被害者家族は、リハビリ病院の主治医が、障害の度合いを実際よりも、軽く評価していることを不安に感じており、弁護士は、自賠責保険に後遺障害診断書を提出する前に、事故直後に救急搬送された救命救急センターの診療録、看護記録などを取りつけ、初期症状を検証しました。

同時に、被害者の現在症状を十分把握した結果、被害者の傷病名が中心性頚髄損傷であることを確信できたので、主治医にそのことをしっかり認識してもらい、MRI画像所見、神経学的な検査所見などを後遺障害診断書と脊髄症状判定用の書式に、具体的に記載するように求めました。
その結果、自賠責保険調査事務所からは、3級3号の認定を受け、直後に訴訟を提起しています。

②将来介護料では、弁護士がリハビリ科の医師と面談、カルテの記載は、あくまでもバリアフリー化された病院内で過ごすことを前提とした内容であって、一般住宅の自宅に帰ったときは、障害の内容が日常生活に支障をきたすことを医師の意見書で立証しています。

⇒結果、裁判所は日額3000円の介護料と、被害者が病院と同じ環境で日常生活を送る必要から、1階部分のプレハブ増築費用などを認定しました。

将来介護料2000万円、家屋改造費160万円、4年3カ月分の遅延損害金2200万円など1億4100万円の総損害額、自賠責保険からの既払い金2200万円を除き、1億1900万円の損害賠償が実現できました。

NPOジコイチのコメント

本件では、当初の救命救急医は中心性脊髄損傷を理解していたのですが、転医先のリハビリ科の医師には、その認識が希薄でした。そこで、救命救急の診療録、看護記録を分析し、それらを具体的に伝えることで、医師の理解を促した結果、自賠責保険の調査事務所は3級3号を認定しました。

しかし、リハビリ病院で作成されたカルテを訂正することはできません。
相手の損保は、このカルテ記載の内容を根拠として9級に相当する軽度障害と反論しています。

そこで、リハビリテーションセンターはバリアフリー化されているため、実際には重い障害が目立ちにくいこともあって、障害の度合いを軽く評価する傾向であることに、主治医の理解を求めました。

そして、中心性頚髄損傷の被害者にあっては、治療先と自宅とでは、まったく環境が異なる点を強調し、このことを医師に十分認識いただいた上で、意見書の作成を依頼し、裁判で反論を行い、同時に、自宅を病院と同じようにバリアフリー化するための費用をしっかり積算して請求したのです。

※中心性頚髄損傷

中心性頚髄損傷

ここまでは、主に横断型脊髄損傷、つまり完全損傷の解説でした。
横断型では、XP、MRIで脊髄損傷を立証することが容易です。
ところが、中心性頚髄損傷は、大半が、骨折、脱臼の認められない非骨傷性の不完全損傷です。
後遺障害としての中心性頚髄損傷の立証は、医師の理解や興味、協力が得られないことが多く、いつでも相当に困難で、苦労しています。

まず、当初の診断書に中心性頚髄損傷と記載されていても、70%強は、単なる頚椎捻挫です。
受傷直後の診察で、被害者が両上肢の痺れを訴えただけで、中心性頚髄損傷と診断され、入院下で脊髄の浮腫を改善させるステロイド療法が実施されます。
その後、MRIのT2強調画像で高輝度所見が認められないときも、先の傷病名は訂正されないことがほとんどで、被害者は、「阪神の赤星外野手は中心性頚髄損傷で球界を引退した?」 こんなことを考えて落ち込んでいるのですが、被害者請求では、非該当、認定されても14級9号で大騒ぎとなります。

MRIのT2強調画像で、脊髄の中心部が白く光る高輝度所見が得られていても、下肢の機能には問題がなく、普通に歩けるので、中心性頚髄損傷の認識が希薄な医師であれば、少し重度な頚椎捻挫の理解で、スルーされています。

実際の中心性頚髄損傷では、上肢の症状が強く、運動麻痺、疼痛、ビリビリするような両手や手指の痺れ、パジャマのボタンを留めることができないなど、手指の巧緻運動障害を引き起こします。
痺れでは、タンスの角に肘をぶつけたときに感じる、ジンジンする痺れが、両上肢に持続するのです。

神経学的検査では、深部腱反射が亢進、ホフマン、トレムナー反射、ワルテンベルグ徴候では病的反射が出現し、両上肢は筋萎縮でやせ細ります。

ホフマン反射トレムナー反射

ワルテンベルグ徴候

そして、箸を使用して食事ができない等、手指の巧緻運動障害が認められます。
その他の症状として、膀胱障害を伴うことがあり、このケースでは、泌尿器科でウロダイナミクス検査をお願いして立証しなければなりません。
中心性頚髄損傷の傷病名があれば、早期のMRI撮影で高輝度所見を立証しなければなりません。
立証された中心性頚髄損傷は、脊髄損傷ですから、決して、ムチウチのカテゴリーではありません。

後遺障害の立証では、後遺障害診断書以外に、脊髄症状判定用の用紙を提出し、肩・肘機能、手指機能、下肢機能、上肢・下肢・体幹の知覚機能、膀胱機能、日常生活状況について、検査と結果の記載をお願いしなければなりません。

チーム110のスタッフは、事前に脊髄症状のチェックを行い、日常生活状況については、被害者の職業上の具体的な支障を記載した書面を主治医に面談して提出しています。
ここまで明らかにしないと、目指す等級の獲得はできません。
中心性頚髄損傷は、後遺障害の立証で、メディカルサポートが必要な傷病名です。