工程表
項目 内容
1   当初、ご家族は、交通事故の発生に驚愕し、治療先のICUに駆けつけるも、狼狽えるばかりで、なにも考えられない、手がつかない状態です。
事故の事実を受け入れ、比較的、落ち着きを取り戻すのは、受傷から1カ月を経過した頃ですが、まず、最初に手掛けるのは、弁護士への委任です。
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3 弁護士委任 弁護士とは、綿密に協議し、以下の介護計画を立案して具体的に進めるのです。これらに対応できない弁護士であれば、直ちに解任、他の弁護士を探すことになります。
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6 成年後見の申立 被害者が成人では、家庭裁判所に成年後見審判の申立をします。
これにより、2カ月も経過すれば、いつでも訴訟の提起が可能になります。
7 身体障害者手帳 居住地の市区町村の窓口に、身体障害者手帳を申請します。
遷延性意識障害では、身体障害者1級が認定され、この結果、症状固定で治療費が打ち切られても、1カ月、500円の負担、もしくは全額を国庫負担で治療を続けることができます。
8 介護体制   ①医療体制
地元の医師会に出向き、往診可能な医師の紹介を求めます。
その後、治療先で紹介を受けた医師と面談、6カ月後から、週に2回の往診を依頼します。
複数の職業介護人の派遣事務所を訪問、介護の内容、料金などを質問し、パンフレットを回収、介護人の性格や力量などが遷延性意識障害者や家族と合うかどうかを検証して、1社を選択します。
訪問入浴介護サービスも、先と同様に、複数を打診して決定することになります。訪問看護は、現在の入院治療先に相談して、決定します。
②介護住宅の改造計画と見積
遷延性意識障害者にとって安全で、一緒に暮らす家族にとって、介護しやすい改造を目指すのですが、弁護士を含め、理学療法士や作業療法士など要介護者の身体機能に精通した専門家、業者を交えて、住宅改造計画、資金計画を立案します。
③介護技術の研修
家族介護者は、現在の治療先にお願いし、食事、痰の吸引と口腔のケア、排尿と排便、褥瘡のケアなどの研修を受けて、介護技術を修得します。
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12 症状固定の決断 ①後遺障害診断を受け、弁護士委任による被害者請求を行います。
②住宅の改造に着手します。
13 自賠責保険金 ①およそ40日後、1級1号が認定、4000万円が振り込まれます。
②介護機材の搬入と設置を行います。
③主治医の許可
主治医に介護計画書を提出し、医療体制、住宅の改造、介護体制が整備されたことを報告、自宅における介護の許可を書面で得ておきます。
14 自宅介護の開始 治療先を退院、自宅介護が始まります。
家族介護者が就労しているときは、月~金の240日間を職業介護人による介護、土日・祝日の125日間は家族による介護のシフトとなりますが、介護をしている家族にも休養が必要であり、年間で30日以上は、レスパイトとして、職業介護日数に上乗せしなければなりません。
15 NASVA 福祉 訴訟の提起 症状固定後は、裁判で損害賠償額が確定するまで、およそ1年間について諸費用の内払いはなく、堪え忍ばなければなりません。
自賠責保険からは4000万円の振込がなされていますが、一部は、住宅の改造費で出費しています。

①そこで、独立行政法人 自動車事故対策機構に介護料を請求します。
職業介護人に支払う介護料、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、介護用品の費用などは、自動車事故対策機構に領収書を提出すれば、毎月、6万8440円~13万6800円の範囲内で補助を受けることができます。
これらの支給金は、裁判で損益相殺※の対象となりません。


居住地の地方自治体も独自の福祉プランを用意しています。
これらの利用も、裁判では損益相殺の対象となりません。
①介護計画書
自宅の改造、介護機材の購入、介護体制は、介護計画書で立証します。
②日々の介護の状態は、家族の陳述書で立証します。
③自宅介護を認めた主治医の意見書も用意しています。

あとは損保側の反論に対して、追加の立証をしていくことになります。
自宅介護を続けながら、裁判における弁護士の立証に協力していきます。

※損益相殺とは?

交通事故被害者にとって、過失相殺と損益相殺は、耳を塞ぎたくなる単語です。
なぜなら、いずれも、損害賠償額からカットされるもので、被害者が受け取る損害賠償額に大きな影響を与えるからです。

損益相殺は、加害者の負担と被害者の利益が公平でバランスの取れたものとなるように、慣習的に守られている法律的な考え方ですが、ざっくばらんには、「焼け太りは、許しまへんで?」
被害者が損害分を超える、過剰な利益を得るのを防ぐことを目的としているのです。

損益相殺の対象となるもの 損益相殺の対象とならないもの
①受領済の自賠責保険金 ①自損事故保険金
②受領済の政府保障事業による填補金  ②搭乗者傷害保険金※
③労災保険法に基づく給付金 ③生命保険金※ 
④厚生年金保険法に基づく給付金 ④傷害保険金 
⑤国民年金法に基づく給付金 ⑤労災保険上の特別支給金※
⑥健康保険法に基づく給付金 ⑥社会儀礼上相当額の香典・見舞金 
⑦地方公務員等共済組合法に基づく給付金 ⑦身体障害者福祉法に基づく給付
⑧所得補償保険金 ⑧自動車事故対策機構法に基づく介護料※
⑨人身傷害保険からの支払い ⑨生活保護法による扶助費
⑩雇用対策法に基づく職業転換給付金
⑪特別児童福祉扶養手当

①搭乗者傷害保険金

加害者が契約する搭乗者傷害保険についても、最判 H7-1-30判時1524号48頁は、損益相殺の対象とはならないとしていますが、下級審の裁判例においては、加害者が保険料を負担して賠償がなされたことなどを理由に、慰謝料を減額するものがあります。
(名古屋地判 H4-5-11判タ794号139頁など。)

②生命保険金(最判昭和39年9月25日民集18・7・1528)

払込保険料の対価たる性質を有し、被保険者の死亡に基づいて支払われるので控除されません。
ところが、保険料を負担して加入していても、所得保障保険では、損益相殺の対象となっており、ここが理解できないところです。

③労災保険上の特別支給金(最判平成8年2月23日判時1560・91)

休業特別支給金、障害特別支給金、障害特別年金、遺族特別年金などの特別支給金では、労働者福祉事業の一環として支払われるもので、損害額から控除されません。

④独立行政法人自動車事故対策機構法に基づき支給される介護料

被害者の負担軽減を目的とするものであり、損益相殺の対象にはなりません。

1)損益相殺と過失相殺の順序?

過失相殺と損益相殺の計算順序による賠償金の違い?
減額手続きが、どちらが先に行われるかで受け取る賠償の金額が変わってきます。
例えば、損害賠償額が1000万円、過失が30%、損益相殺される金額が300万円あったときの受取金額を、それぞれについて計算してみます。

①過失相殺を先に行ったとき、過失相殺後控除説
1000万円×(1-0.3)-300万円=400万円、受け取れる損害賠償金は400万円です。

②損益相殺を先に行ったとき、過失相殺前控除説
(1000万円-300万円)×(1-0.3)=490万円、受け取れる損害賠償金は490万円です。

計算例からも分かる通り、同じ過失割合、同じ損益相殺額であっても受取金額が変わります。
被害者としては、過失相殺前控除説の方が多くの金額をもらえるのです。

2)過失相殺と損益相殺はどちらが先に行われるのか?

受取金額の計算は、過失相殺後控除説で行われるのが原則です。
その理由は、1000万円の損害賠償額に対して30%の過失があるのなら、1000万円の30%は被害者であっても負担すべきと考えられるからです。
もし逆に計算が行われると、1000万円から300万円の損益相殺が行われてから、過失相殺されるので、本来であれば1000万円の3割を被害者が負担しなければならないのに、700万円の3割しか負担しないで済むことになるからです。

自賠責保険金や政府保障事業填補金、年金給付金は過失相殺の後に、健康保険給付金は過失相殺の前に損益相殺され、労災保険給付金は判例でも決まっておらず、ケースバイケースで処理されています。
しかし、労災保険金のすべてが損益相殺の対象となるわけではありません。
例えば、労災保険には障害年金のように継続的な給付を内容とするものもあります。
損益相殺の対象となるのは、労災保険から現実に支給された額と、現実には支給されていないものの支給が確定した額だけであり、将来支払われる予定の未払い部分までが損益相殺されることはないというのが裁判例の考え方です。

※NPOジコイチの取り組み?

NPOジコイチとチーム110の主たる取り組みは、後遺障害の立証と等級の獲得ですが、遷延性意識障害では、CTで上部脳幹・視床下部・視床・大脳半球の広範囲の不可逆的なダメージが確認され、被害者が寝たきりであれば、1級1号が認定されています。
したがって、後遺障害等級の立証面では、活躍する場面は、ほとんどありません。

遷延性意識障害では、圧倒的に、損害賠償を担当する弁護士の力量が問題となるのです。
そこで、チーム110は、連携弁護士の依頼により、以下のサポート業務を中心としています。

1)適切な治療先の紹介

遷延性意識障害者では、当面の問題として、少なくとも6カ月以上の入院加療が不可欠となります。
しかし、最初に救急搬送された治療先は、およそ3カ月を超えると転院が言い渡されます。
なんとか転院先を見つけても、3カ月を経過すると、さらなる転院がうながされるのです。
遷延性意識障害の被害者と家族にとって、受け入れ先の確保は、苦痛の連続する作業です。 NPOジコイチは、医療ネットワークから、それぞれの被害者に応じた適切な治療先を紹介しています。

2)工程表に基づくサポート

先の工程表に基づき、ご家族に同行して、すべてのサポートを実施しています。

損害賠償請求訴訟が完了した段階では、障害年金の申請を行い、すべてのサポートが完了します。