脳性小児麻痺の既往歴がある50歳男性が、横断歩道を歩行中に乗用車に跳ね飛ばされ、脳外傷および心肺停止後蘇生による無酸素脳症により、遷延意識障害1級1号が認定されました。
被害者は兄夫婦の自営業を手伝っており、200万円の年収を得ています。
また、家業が忙しく、介護の時間を十分に確保できないので、家族は、施設介護を希望しています。

損保の反論

①被害者は横断歩道上で立ち止まった事実があるため、重過失があると判断される?

②先天性の障害を持つ被害者の逸失利益では、既往症による減額を行うべきである?

弁護士の立証

①横断歩道上で立ち止まった事実があったとしても、それが重過失と評価されるべきものか?
実況見分記録、交通事故現場見取図を検証して、強く、反論しています。

⇒損保は、重過失減額を取り下げました。

②まず、自賠責保険に対する被害者請求を行うのですが、申請すれば、自賠責保険調査事務所は、被害者の脳性小児麻痺を加重障害ととらえ、減額を検討することになります。
であれば、被害者請求の段階で、先回りをして被害者の脳性小児麻痺の実態を明らかにしておかなければなりません。
兄夫婦に確認、陳述書を作成し、加えて、事故前からの、かかりつけ医師と面談、なにができて、なにができなかったのか、健常人に比較してどれ位の減額が妥当かなどについて、意見書を取りつけて、加害者の自賠責保険に対して委任による被害者請求を行いました。

⇒自賠責保険調査事務所は、既往症による減額を10%と審査し、3700万円を振り込みました。

結論

施設介護でしたが、将来介護料としては、相当に高額の日額1万2000円で6380万円、介護用品費750万円、後遺症慰謝料3100万円、近親者慰謝料300万円など、損保との示談交渉ですが、調整金1500万円を含み、総額約1億5000万円の高額示談を成立させています。

NPOジコイチのコメント

損害賠償では、被害者に既存障害が認められるときは、その分は、減額の対象となります。
既存障害は、本件の脳性小児麻痺なども含まれており、交通事故外傷に限ったものではありません。

自賠責保険調査事務所は、これを加重障害と呼び、申請された後遺障害の等級と既存障害等級の2つを決定し、認定等級から既存障害等級分を差し引いて、振り込んでいます。
したがって、弁護士は、本件事故による遷延性意識障害の後遺障害だけでなく、既存の脳性小児麻痺の等級にも目配りをしなければならないのです。
これを怠ると、損保側の根拠に乏しい大幅減額を受け入れることになるからです。
本件では、同居の兄夫婦の陳述書、かかりつけ医の意見書で立証がなされており、10%の減額はパーフェクトなもので、裁判所も、問題にすることなく認容しています。

私の経験則では、顔面の醜状痕で7級を想定した女性で、右頬部分の青痣が指摘され、加重により非該当とされたことがあります。このときは、右頬の青痣について、レーザ治療を続け、これを消し去ってから異議申立を行って7級を取得しました。
これを実現するのに、2年を要したのですが、これは、私にとって、執念の異議申立です。