20歳男性、大学生が、大学内の駐車場で、被害者が被告車両のボンネットに伏せて乗っていたところ、被告運転手が発進し、左ハンドルを切ったときに転落し、遷延意識障害1級1号が認定されています。

損保の反論

①損保は、被害者に80%の過失が認められること?
②自宅介護は不可能であること?

弁護士の立証

①本件事故は被害者がボンネットから転落して発生した事故であり、当然のことながら、被害者の過失割合が大きな争点でありました。
一定の過失はやむを得ないと考えるものの、そもそも、加害者が、かかる状況で、自動車を発進させたことで、重大な事故に至ったのであると主張しました。

⇒裁判所は、被告が自動車を発進させたことが重大な事故に至った経緯を重視し、被告に80%の過失があることを認定、損保側の主張、80:20は、20:80となり、逆転しました。

②自宅介護は不可能であるとの損保の反論に対しては、
ⅰ)本人ないし家族が希望していること、
ⅱ)人的支援が確保されていること、
家族の介護に加え、訪問ヘルパー、訪問看護師、訪問リハビリなど、人的資源が確保されていること、
ⅲ)物的設備が確保されていること、
バリアフリー構造やリフター設備などの介護住宅、パルスオキシメーターなどの医療機器など、
ⅳ)医療的環境設備が整っていること、
訪問診療などの定期的往診、状態が悪化した際に、対応できる救急病院が近隣に存在すること

ⅰからⅳを満たす本件では、自宅介護を認めるのが相当であると、介護計画書、母親の陳述書、主治医の自宅介護を認める内容の意見書を提出して主張しました。
⇒裁判所は、「ベストケアを行えば、それがないよりもはるかに長生きできる蓋然性が高いことが明らかであるのに、費用が高過ぎるとして、ベストケアを受ける費用分の損害賠償を認めないということは、そのベストケアを受けたとしても一般人ほどには長生きできそうにない被害者に対して、余りにも酷な話であり、人道上許されないように思われる。」このように判示しています。

遷延性意識障害について、将来の基準となる、丁寧な認定がなされた判決文です。

結論

将来介護料については、母親が仕事に就いている20年間は、職業介護2万5000円×300日、近親者介護は1万円×65日、それ以後37年間は、職業介護2万5000円×365日が認定されました。
住宅改造費1900万円、車両改造費300万円、介護備品費1500万円、医療機器400万円、将来の介護雑費2200万円、過失を20%控除して、総額2億9700万円が認定されました。

NPOジコイチのコメント

なんでもない、若者のおふざけが、取り返しのつかない大事故となりました。
それにしても、80%過失、自宅介護は認められないなど、損保の反論も、暴論に等しいものです。
丁寧な立証で、反論のすべてをねじ伏せた弁護士の力量に経緯を表するものです。
「ベストケアを行えば、それがないよりもはるかに長生きできる蓋然性が高いことが明らかであるのに、費用が高過ぎるとして、ベストケアを受ける費用分の損害賠償を認めないということは、そのベストケアを受けたとしても一般人ほどには長生きできそうにない被害者に対して、余りにも酷な話であり、人道上許されないように思われる。」
重度後遺障害を担当する弁護士であれば、記憶にとどめるべき判決文です。