①59歳の主婦が自転車に乗り、信号機のない交差点を進行中、優先道路を直進中の乗用車と出合い頭衝突したもので、被害者には、脳挫傷による遷延性意識障害で1級1号が認定されています。

損保の反論

①こちらが優先道路であり、被害者に50%の過失が認められる?
②介護保険および福祉手当の控除を適用し、将来介護料は減額されるべき?

弁護士の立証

①基本過失割合では、50:50であったが、弁護士は、事故現場に赴き、緻密詳細な検証を実施したところ、加害者にも相当な速度超過などの違反があったことが想定され、加害者に対する証人尋問で、それらを主張、立証しました。

⇒裁判所は、本件事故の過失割合を20:80と認定しました。

②被害者は遷延性意識障害の症状が重く、介護型病院に入院していました。
しかし、介護のすべてを治療先に委ねることができないので、治療先の医師の要請もあり、夫と娘は毎日、病院に出向いて献身的な家族介護を続けていました。
入院費用は月額54万円と高額であったが、近くに転院できる治療先はありません。
被害者側は、現状の介護体制を希望していたので、弁護士は、この入院費用を請求すると共に、家族の付添介護料として日額3000円、交通費として月額2万円を請求しました。

⇒裁判所は、和解案で、これらの請求を認定しました。

介護保険および福祉手当の控除を適用し、将来介護料は減額されるべきについては、弁護士は、将来もこの制度が存続し続けることを予想することは、不可能であると反論しています。

⇒裁判所は、その反論を認め、損保の主張を却下しました。

結果

家族の献身的な介護が評価され、近親者慰謝料500万円、本人慰謝料は2800万円、20%の過失相殺後で、総額1億4000万円の損害賠償が実現しています。

NPOジコイチのコメント

介護型病院は、設問11、12でも取り上げていますが、遷延性意識障害者に対して、手厚い介護のできる病院は、ほとんどありません。入院を認めても、家族には、介護のサポートが求められます。
本件の弁護士は、この点にも着目し、月額54万円の入院費用以外に日額3000円の介護費用と月額2万円の交通費を請求し、裁判所で認容されています。
常に、被害者サイドに立って、徹底的に請求する姿勢は、他の弁護士も見習わなければなりません。

※介護保険の適用?

40歳以上の会社員では、介護保険料が給与から天引きされているのですが、遷延性意識障害者で介護保険が適用されるのは、65歳以上に限られており、20歳以下では、小児医療手当に頼ることもできますが、20~65歳未満となると、頼るものが、ありません。

本件では、まだ60歳であり、直ちに、介護保険の適用を受けることはできません。
この女性が65歳以降になったとき、現在の介護保険制度が存続しているかは予測できません。