1)地方裁判所支払基準の適用

交通事故で無念の死をとげた被害者の無念を晴らすためには、損害賠償においては、損保との話し合い解決ではなく、ガラス張りの地方裁判所支払基準の実現でなくてはなりません。

①死亡慰謝料

①死亡慰謝料
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
ⅰ)一家の支柱1700万円 ⅰ)一家の支柱 2800万円
ⅱ)未就労で18歳未満1400万円 ⅱ)母親・配偶者 2500万円
ⅲ)65歳以上の高齢者1250万円 ⅲ)独身の男女・子ども・幼児2000~2500万円
ⅳ)上記以外では1450万円

※遺族慰謝料の請求権者は、被害者の父母(養父母)、配偶者(内縁関係を含む)および子(養子・胎児・認知した子を含む)となります。

もちろん、自損事故となれば、加入の人身傷害保険、人身傷害保険に未加入のときは自損事故保険からの回収となり、地裁基準を実現することはできません。
しかし、加害者の存在する過失事案では、人身傷害保険に対する先行請求と訴訟解決の組み合わせで、地裁基準とほぼ同額の損害賠償を実現することができます。
高次脳・遷延性意識障害・脊髄損傷・死亡事故においては、有能で経験則の豊富な弁護士に委任して解決しなければなりません。

②逸失利益と基礎収入

①給与所得者の基礎収入
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
現実収入額 事故前の収入を基礎、賃金センサス以下では、蓋然性の立証、
30歳未満の若年者は、全年齢平均給与額 30歳未満の若年者は賃金センサス全年令平均
②事業所得者の基礎収入
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
なにがなんでも申告所得額 申告所得を参考とし、申告額と実収入額が異なるときは、立証することで年齢別賃金センサス
現実収入が平均賃金以下では、申告の現実収入 現実収入が平均賃金以下では、蓋然性を検証
所得が家族労働の総体で形成されているときも、申告の現実収入 所得が家族労働の総体で形成されているときは、被害者の寄与率を考慮する、
現実収入の立証が困難なときは、18歳年令別平均給与額、 実収入の立証が困難なときは、各種統計資料から賃金センサスに当てはめる、
③会社役員の基礎収入
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
役員は労働者でないとして否認、 労務提供の対価部分のみを認容、
④家事従事者の基礎収入
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
年齢別平均給与額 最高裁判例S49-7-19 賃金センサス学歴計女子労働者の全年令平均賃金額を基礎とする、
H28年では、376万2300円、

有職の主婦では、実収入が賃金センサスを上回るときは実収入、下回るときは賃金センサス、家事労働分の加算はなし、
⑤学生・生徒・幼児
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
全年令平均給与額 賃金センサス学歴計男女別全年令平均賃金、
⑥高齢者・年金受給者
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
年令別平均給与額 就労の蓋然性があれば、賃金センサス学歴計男女別年令別平均賃金を基礎、
⑦失業者
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
年令別男女別18歳平均給与額 労働能力と意欲があり、就労の蓋然性のあるものは再就職で得られるであろう収入を基礎とする、
この場合、失業前の収入を参考とする、失業前の収入が平均賃金以下の場合、蓋然性により男女別賃金センサスを採用する、

逸失利益は、(年間収入額-生活費)×死亡時年齢の就労可能年数に対応するライプニッツ係数で計算するのですが、基礎となる収入の取り方と、この後で説明する生活比率で、どのようにも計算できることになります。損保の積算は、あらゆる階層で、常に硬直的であり、被害者の実情に寄り添うことはなく、立証により現実を直視する裁判所とは、大きくかけ離れるのです。

有能な弁護士が被害者に寄り添い、シッカリと立証を行うことを前提とするなら、いつの場合でも、地方裁判所支払基準に行司軍配が上がることになります。
こうした事実から、死亡事故は、必ず、弁護士による解決が望まれるのです。

③生活費の控除率

生活費控除率
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
被扶養者がいないとき、50% 一家の支柱で被扶養者1人は40%
被扶養者が2人では、35% 一家の支柱で被扶養者2人以上は30%
被扶養者が1人では、40% 女子(主婦、独身、幼児を含む)30%
被扶養者が3人以上では、30% 男子(独身、幼児を含む)50%
30歳主婦の死亡例では
損害の費目 任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
死亡慰謝料 1450万円 2400万円
逸失利益 2901万円 4359万円
葬儀費用 100万円 150万円
損害額合計 4451万円 6909万円

損保の支払は、4451万円となっていますが、自賠責保険より3000万円が充当されるので、実質的な損保会社としての負担は、1451万円、こんなカラクリも知っておく必要があります。

④葬儀費用

④葬儀関係費用
任意保険支払基準 地方裁判所支払基準
原則60万円、運用上100万円の範囲で実費、 150万円、これを下回るときは、実際の支出額、

2)死人に口なしの処理

被害者が死亡では、当然ながら、ご本人は、事故発生状況を説明することができません。
結果として、加害者の供述だけが警察の調書に記載され、過失割合において被害者側が不利になることが少なくありません。
殺人事件など、犯罪を構成するものであれば、警察も慎重に捜査を行うのですが、交通事故は、自動車運転過失致死罪であり、普通、犯罪の臭いはありません。
したがって、残念なことですが、定型的な捜査で処理されてしまうことが一般的なのです。

最悪では、被害者であるのに、加害者の扱いを受けることも、これまでに経験しています。
万一、過失割合が100%と判断されようものなら、死亡したとしても無責と判断され、自賠責保険、その上乗せである加害者側の任意保険も一切、支払われなくなります。
その事実関係が真実でないときは、まさに、死人に口なしとなり、二次被害を受けることになります。

決定済みの警察や検察の捜査結果や、保険会社の過失割合を覆すことは、相当に困難です。
こうした二次被害を防ぐためにも、できるだけ早く、できれば加害者の刑事処分が決まる前の段階から、交通事故に精通した弁護士に相談されるべきと考えています。

弁護士自らが、事故の状況を確認し、疑問点があれば目撃者を捜すなど、事故の状況をしっかりと調査し、その上で、加害者に証人尋問を求めるなどして、適正な過失割合を判断します。
さらに、被害者の年齢、生前の職業や収入、将来の夢についても、ヒアリングした上で逸失利益を算定し、ご家族が被った損害についても緻密に立証していくことになります。