死亡事故に関するNPOの無料相談

38歳、男性公務員が二輪車を運転して青信号を直進中、左方から信号無視の加害自動車の衝突を受け、大腿骨複雑骨折、腰椎骨折などの傷病名で入院、3日後に手術を受けるも、直後に、高カリウム血症による心停止となり、4日目に死亡しています。
被害者には、糖尿病の疾患があり、事故受傷と死亡との因果関係が大きな問題となりました。

損保の反論

糖尿病のためにグリコールインスリンが効かず、その結果、出血が止まらず死に至ったとして、30%の素因減額が相当?

弁護士の立証

①弁護士は、「糖尿病により出血が止められない?」 について、専門医の意見書を提出して立証を行い、事故の受傷そのものが重く、それが死亡につながったと反論しています。

⇒裁判所は、糖尿病との因果関係が0ではないとしながらも、10%の素因減額で和解解決とすることを提案しました。

②この裁判では、すでに他家に嫁ぎ、家庭を持っていた妹が、事故後に体調を崩した母親を看病しながら原告として名を連ね、訴訟に携わっていました。
本来であれば、戸籍を離れた兄弟姉妹に慰謝料が支払われることはありませんが、弁護士は、妹の置かれた特殊な状況について裁判所に訴えています。

⇒裁判所は、母親に対する慰謝料300万円の外に、妹に対して200万円の慰謝料を認めました。

素因減額で10%が控除されるも、8200万円の損害賠償額が実現しています。

NPOジコイチのコメント

糖尿病のためにグリコールインスリンが効かず、その結果、出血が止まらず死に至った?
被害者は、高カリウム血症による心停止で死亡しているのです。
損保の反論は、風が吹いたら桶屋が儲かる程度の発想であり、かなりズレています。

糖尿病は、インスリンの作用不足により、血糖値が正常よりも高い状態が続いている症状のことです。
インスリンは血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉に送り、血糖を下げる役割をする重要なホルモンであり、
インスリンの作用不足では、体内のブドウ糖が有効に活用されず血中に残り、血糖値が高くなります。
処理しきれなかったブドウ糖は、尿へと流れ出ることになり、この状態が糖尿病なのです。

糖尿病では、出血が止まらないのではなく、血液中に余分なブドウ糖が存在しており、血液は砂糖水のようにドロドロになり、流れにくく、血管が詰まりやすくなるのです。

糖尿病の3大合併症である、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症も、正に、血流が悪くなり、血管が詰まってしまうことによって生じる病気なのです。

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また、糖尿病では、体内の脂肪の代謝が妨げられ、血中の中性脂肪が増えることが多いのです。
血糖値が高いと、LDL、悪玉コレステロールが酸化されやすく、動脈硬化が進む原因にもなります。
血管の詰まりが脳の血管で起これば脳梗塞、心臓付近の血管で起これば心筋梗塞となるので、これらを防止する必要から、血液をサラサラにするワーファリンが処方されることがあります。
ワーファリンを内服していれば、出血では、血は止まりにくくなりますが、それで死ぬことはありません。
糖尿病すなわち血が止まらない? チンピラの言いがかりに過ぎません。

本件では、糖尿病性ケトアシドーシスにより、高カリウム血症となり、治療先の対応の遅れもあって死亡に至ったと考えるのが自然なのですが、どうしてか、損保は血が止まらなくなって死亡したと騒いでいるのです。

糖尿病と聞けば、損保は素因減額で大騒ぎするのですが、ほとんどは、その根拠がありません。
主治医の協力を得て、冷静に対応することが重要です。
本件では、ワーファリンの内服があったのかが不明ですから、素因減額の10%には言及できません。

※高カリウム血症

カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質であり、ほとんどは細胞内に存在し、血液中などに存在するのは、ごく僅かな量です。
ヒトの身体は、細胞内のカリウムを使って、血中のカリウム濃度を一定に維持していますが、このバランスが崩れ、カリウム濃度が高くなったり、低過ぎたりすると細胞はうまく働かなくなり、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状が出現します。
血中のカリウム濃度が5.5mEql以上を高カリウム血症と呼びますが、カリウム値が7~8mEqlを超えると危険な不整脈が現れ、心停止の危険性が生じます。

検査と診断

血液中のカリウム濃度を測定して診断、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、副腎皮質ホルモンの測定などにより、原因を探ります。

治療

血液中のカリウムを減らす治療が加えられます。
食事のカリウム制限、イオン交換樹脂製剤でカリウムの吸収を抑え、利尿薬により、排泄を促します。高カリウム血症の重症例では、グルコン酸カルシウムで重症の不整脈を予防し、重曹を投与して酸性に傾いた血液を中和します。

※糖尿病性ケトアシドーシス

糖尿病患者において、インスリンの絶対的欠乏によってもたらされるアシドーシスで、短期間で多尿、嘔吐、腹痛などの症状が現れ、進行すると昏睡や意識障害をきたし、結果、死亡することもあります。

血液が酸性に傾くと、体の状態に応じてカリウムが細胞のなかから血液中に移動して生じます。
糖尿病性ケトアシドーシスでは、しばしばアシドーシスによる高カリウム血症が見られるのです。
ただし、ほとんどは、遺伝性の1型糖尿病患者に限られています。
糖尿病は、1型と2型の2つで、日本人の糖尿病患者の約90%、2367万人は2型の糖尿病です。
2型は、生活習慣病の1つで、過食、肥満などの生活習慣や加齢といった要因で発症しています。

※アシドーシス

血液中の酸と塩基との平衡が乱れ、酸性側に傾いた酸性血症であり、腎不全・糖尿病を原因としてアルカリ性の重炭酸が失われたときなどに見られます。