死亡事故に関するNPOの無料相談

47歳、男性会社員が、自転車を運転して幹線道路を横断中、直進中の普通乗用車に跳ね飛ばされ、死亡しています。

損保の反論

①本件交通事故では、被害者の過失が55%であり、加害者過失よりも大きい?
したがって、損害賠償は、自賠責保険金を充当すれば事が足りる?

②逸失利益では、60歳以上になれば収入が下がるのではないか?

弁護士の立証

①弁護士は、刑事記録を分析して矛盾点を炙り出し、加害者を証人尋問して速度超過について問い質しました。

⇒裁判所は、加害者の速度超過を認め、被害者の過失を35%と認定しています

被害者は、人身傷害保険5000万円に加入していたので、過失相殺の35%は、この保険から回収することができました。

②60歳以降は、収入が下がるのではないか? この損保の反論に対しては、弁護士は、被害者は会社の幹部であり、将来の昇給の可能性を考慮すると、60歳以上の減収分を埋め合わせることになるとして、勤務先の給与規定を証拠提出し、反論しています。

⇒裁判所は、47歳、事故当時の収入を基礎収入として67歳までの逸失利益を認定しました。

③過失相殺額について、損保は、地裁基準より低額の損保基準を適用すべきと主張したのですが、弁護士は、訴訟の提起では、地裁基準を用いるべきと強く主張しています。

⇒裁判所は、被害者にとって、最も有利となる地裁基準差額説を採用し、裁判所認定の損害額すべてを確保することができました。

35%の過失により、3160万円が相殺されましたが、この全額が人身傷害保険から補填されました。 加害者損保から5880万円、加入の人身傷害保険から3160万円、合計9040万円の損害賠償額を実現することができました。

NPOジコイチのコメント

上記は、2009年に東京地裁で和解となったもので、訴訟の前後に関係なく、裁判所が訴訟差額説を認定すれば、地裁基準で過失相殺分が獲得できる、古き、良き時代であったのです。

現在、損保の人身傷害保険の扱いは、相当に厳しいものとなっています。
私がAランクとしている損保ジャパン日本興亜を検証してみます。

※損保ジャパン日本興亜 人身傷害保険約款
第6条(損害額の決定)
(3)(1)および(2)の規定にかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において(1)および(2)の規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの人身傷害条項における損害額とみなします。ただし、その損害額が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。

第8条(支払保険金の計算)
(3)(1)および(2)の規定にかかわらず、第6条(損害額の決定)(3)の規定を適用する場合は、1回の事故につき当会社の支払う保険金の額は、被保険者1名につき、次のいずれか低い金額を限度とします。
①(2)に定める限度額
②第6条(1)および(2)の規定により決定される損害額

上記のお題目を、日本人なら誰でも理解できるように翻訳すると、
第6条(損害額の決定)では、判決や和解で確定した額を損害額とすると容認しておいて、
第8条(支払保険金の計算)においては、判決や和解で確定した損害額であっても、支払保険金は、損保が算定する損害額を限度とすると規定、つまりは、地裁基準による支払を否定しているのです。
事実上は、判決や和解で確定しても、人傷基準でしか保険金を受け取れないのです。

事例で説明すると、
①総損害額が裁判で1000万円、自身の過失分が80%と判決されました。
⇒②すると、相手からは、1000万円×(100%-80%)=200万円が支払われます。
⇒③続いて、人身傷害保険に過失相殺された800万円を請求します。
⇒④しかし、人傷基準で計算された総損害額が地裁基準の2分の1の500万円となったときは?
第8条(3)の②の規定により、800万円は支払い限度額をオーバーしており、人身傷害保険からの追加支払は500万円×80%=400万円となります。
結果、200万円+400万円=600万円となり、400万円も不足しているじゃないの?

計算上、契約者の過失が40%以下であれば、滅多に発生しない現象ではあります。
しかし、契約者過失が50%を超えて大きいときは、このことが想定されるのです。

もっとも、一般的には、契約者過失が80%もあれば、相手損保は、一括対応を拒否しますから、被害者が加入の人身傷害保険に支払いを求めることになります。
治療後、後遺障害の申請となっても、人身傷害保険にお願いすることになります。
人傷基準による支払を防ぐため、あえて賠償先行で裁判基準を勝ち取ったとしても、上記のごとく、支払いで限度額の適用となれば、頭の上に天井が乗っかっていることになります。
裁判基準での全額獲得を目指しても、このように契約者過失が大きいときは、人傷基準の満額までとの上限が壁となります。

損保の、なにがなんでも、支払い金額を抑えたい執念を感じています。
もっとも、自分の過失が大きい交通事故で、地裁基準の実現を目指して欲張るのも如何なものか? ちょっと図々しいのではないか? とも思っています。

しかし、このことは、重要事項説明書で説明されておらず、私は、不当条項であると考えています。
当面は、Aランクの6社であっても、人傷先行で回収しなければなりません。
最終的に、どうやって攻略するか? 連携の弁護士を交えて協議中です。

入場料を払ってストリップ小屋に入っても、かぶりつき席では、別料金として座布団代を請求される?
しかし、追加料を払えば、目の前で見られる?
なんとも、えげつない料金体系ですが、損保は、地裁基準でお支払いしますよ、しかし、自社の基準で計算した限度内ですよ? ストリップよりも、はるかにタチが悪いのです。